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乳がんセミナー 【講演録 1-4】

公益事業

「正しい知識を正しく知ろう!乳がんの最新情報と社会生活の関わり」講演録

シリーズ『元気に働き、人生を楽しむ女性の健康講座』第4回「正しい知識をを正しく知ろう!
乳がんの最新情報と社会生活の関わり」(平成28年3月2日於家の光会館コンベンションホール)を開催いたしました。
海瀨博史先生のご理解・ご協力により、講演録を公開する運びとなりました。

主催:東京顕微鏡院・こころとからだの元氣プラザ
後援:厚生労働省、東京都、健康日本21推進全国連絡協議会
日本乳癌学会、日本乳癌検診学会、日本産婦人科乳腺医学会

海瀨博史先生
「乳がん検診・診断・治療~正しい情報を正しく知るために氾濫する情報から身を守る」講演録

海瀨博史先生
東京医科大学
乳腺科学分野
海瀨 博史 先生

 海瀨  働き盛り子育て盛り、なおかつ親の介護の年代の方たちが一番多くかかるのが乳がんです。ですから、社会的にも問題が大きいわけですね。
 乳がんは、ここ20年ぐらいで急に増えて、10年ほど前から全国で乳がん専門の診療科ができ始めました。
 本日、前半は乳がんの基礎知識、後半は予防と正しい知識の入手方法についてお話をします。
 また、是非知ってほしい情報として、昨年出版された『乳がんの処方箋 後悔しないためのリスクと対策』小林俊三著(幻冬舎新書)、日本乳癌学会ホームページに公開している患者さん向けのガイドラインをご紹介します。

乳がんについてご存知ですか
 乳がんといえば、ピンクリボン運動でよく知られていますが、乳がんに関する啓発は十分か?と言えば、情報が正しく広まっている実感がありません。本日はここが1つの大きなテーマであります。
 検診受診者や患者さん達に聞くと「マンモグラフィ検診、初めてです」と言われることがあります。40歳になったばかりの方を除き、50、60、70歳代の方が初めてと言うのは、あり得ないと思います。
 「自己検診」は重要です。他の主ながんは自分で検診できませんが、唯一、乳がん検診だけは自分で触る触診ができます。触診のみの乳がん検診は、平成28年度から行わないことになりましたが、自己検診は大事なのでやってほしいと思います。
 皆さんは、検診を受けていますか。「心配なので毎年2回、別の施設でマンモグラフィを撮っている」、こういう方もいます。「毎年乳がん検診を受けていたのに、何で乳がんになったんですか」と、おっしゃる方もいます。気持ちはよく分かりますが、検診は予防ではありません。乳がん検診・乳がんのことを正しく知っていただきたいと思います。

正しい知識を正しく知ろう
 いつも感じるのは、間違った情報ほど広まり、不安ばかりかきたてられるということです。去年、北斗晶さんの乳がん告白があり、メディアが取り上げました。われわれにとっては乳がんを知ってもらい、検診も正しく受けていただく良い機会だと思い、彼女もそういう思いで自分のことを告白したわけですね。
 ところがワイドショーでは面白おかしく取り上げるだけで正しく報道しません。乳がんの10年生存率は80%です。生存率50%という本人談話ですが、例えば手術ができるステージ3までの乳がんで生存率50%というデータはありません。メディアが情報を公共の電波に乗せるのに、医療的に正しいか裏付けを取らずに流していると言わざるを得ません。いいかげんな情報で国民を混乱させるだけです。
 ですから、日本中の検診施設で受診者が増えたことは良いことですが、受診対象外の人が増え、本当に受けなければいけない人が、予約が3カ月後という状況が生まれています。まずはきちんと情報を把握しましょう。

がん教育でがん患者にやさしい社会に
 もう1つの原因は、がん教育の不備が大きいと思います。日本人は2人に1人が、一生のうちにがんになるという統計があります。半分はがんにならない人たちですが、がんは、糖尿病、高血圧よりも罹患率が高いので、小さい時から教育していないと、職場で、社会で、差別のようなことが生まれてくると思います。ですから、しっかり小中学校のうちからがん教育をしてほしいと思います。

 最初にお話ししたこの『乳がんの処方箋』の著者、小林俊三先生は、昨年11月にお亡くなりになりました。ちょうどその日はこの本の出版日だったと伺っています。
 小林先生は、名古屋市大の乳腺内分泌外科をつくり上げた素晴らしい方で、乳癌学会の会長もされ、とてもよいお人柄で多くの優れた人材を輩出されました。今日お話しする中の1つの柱はこの本から取り上げました。「初産は早く。離乳はゆっくり」。急な断乳はホルモン陰性乳がんのリスクが上がるということです。大事な事は、社会全体で助けていこうということです。子どもを生みたくても生めない社会環境を改善してほしい。ここは本当に大事なところで、乳がん発生リスクの初産高齢化、早期離乳は、女性だけの問題ではなく、男性も真摯に考えるべきだと訴えておられます。
 特に行政の果たす役割は大きいということで、行政の方たちにも、ぜひこれを頭の隅に入れておいていただきたい。結果的に乳がんの発症を予防することになります。
 乳がんの予防は難しいですが、われわれの生活や社会の中で変えていけることは、これからの人たちにとって重要なので、取り上げさせていただきました。

1.統計のはなし~罹患率・死亡率

 最初は統計の話ですので、ざっと見ていただければ結構です。

知っておきたい「乳がんのリスク因子」

乳がんのリスク因子

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 乳がんのリスク因子をスライドに示します。家族に乳がんの方がいるとか、本人が乳がんその他の乳腺疾患に罹ったことがある。高齢初産とか、出産歴がない。初潮が早くて閉経が遅い。閉経後の肥満。以前は閉経前の肥満は乳がんと関係ないといわれていましたが、最近は閉経前の肥満も乳がんのリスク因子という見方が出てきています。
 長期間のホルモン補充療法。更年期障害の治療などで普及しましたが、アメリカの研究で乳がんとの関連が指摘されたことでかなりの方々がホルモン補充療法を中止し、その数年後には乳がんの発症率が下がっています。
 大きくまとめると、遺伝的な要素とエストロゲンに関係したことが、このリスク因子の中から読み取れます。

乳がんに関する数字

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覚えておきたい「乳がんに関する数字」
 乳がんに関する数字で今日覚えてほしいのは、「女性の12人に1人が乳がんに罹患している」という現状です。乳がん患者は年々増えているので、近いうちに10人に1人ぐらいの割合になり、徐々に欧米に近づくかと思われます。ここは覚えておいていただきたいと思います。

乳がん罹患率は20年で2倍に!

乳がん罹患率は20年で2倍に

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 乳がんの罹患率は20年で2倍になりました。この左側のグラフは1985年のデータがピンク、黄色が2008年のデータで表しています。横軸は年齢で、40、50、60歳代で大きく増加したことがわかります。右側のグラフは年齢別のグラフを、調査した年代別に色分けしています。1980年、90年、2000年と調査した中で一番増えている年代が45歳~49歳です。やはり50代から60にかけてが、近年非常に急なカーブを描いて増えています。


乳がん発見時の年齢分布

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乳がん発見時の年齢分布
 これは2011年に乳癌学会に癌登録された年齢の分布です。明らかに40、50、60歳代にピークがあります。日本は欧米よりも発症する年齢が若いです。ただし20代はとても少なく、30代前半も少ないのです。20~24歳代は、0.1%で、圧倒的に40、50、60歳代が多いことをこのグラフの中から知っていてください。

罹患率は高いが死亡率は低い
 国立がん研究センターのがん対策情報センターのホームページは、皆さんがいつでもアクセスできる情報です。
 死亡率に関しては、大腸がんが圧倒的に増えてきています。胃がん肺がんも多いです。乳がんの死亡率は5番目です。膵臓がんより低いのです。

罹患率・死亡率

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 罹患率は、乳がんが図抜けて多いですね。しかし、死亡率は低い。このことを知っていてください。がんになることと、がんで亡くなることは別のことです。
 さまざまな報道を目にして必要以上に不安にならないために、正しい情報を知っていることが大事です。乳がんの死亡率は低いことを知っていれば、必要以上に怖がることはない。正しい情報を正しく知ってほしいと思います。


部位別10年生存率

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最新情報:部位別10年生存率
 これは今年の1月に出た最新のデータで、国が初めてがんの10年生存率を出しました。一般のがんは5年生存率で評価をします。乳がんだけが10年生存率を出しているのは、乳がんは5年以降も再発する方がいるからです。
 乳がんは悪いがんだから10年診るのか?
 そうではなく、乳がんはおとなしいがんで、ゆっくりと再発することがあり10年診るのだと、そういうとらえ方をしっかりとしてほしいと思います。
 乳がんの10年生存率は、80%です。治る人がほとんどだという事実を知っていることが重要です。

将来の患者数予測

将来の患者数予測

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 2030年まで、乳がんの患者総数は、まだまだ増えます。ですから、正しい乳がん検診を受けて下さい。


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