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乳がんセミナー 【講演録 2-4】

公益事業

海瀨博史先生
「乳がん検診・診断・治療~正しい情報を正しく知るために氾濫する情報から身を守る」講演録

2.診断と治療

 診断と治療のお話をさせて頂きます。

月経周期と乳腺の変化

月経周期と乳腺の変化

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 乳房は皮膚の附属器と考えられており、皮膚の中にミルクを作る場所があり、ミルクを乳頭まで運んで赤ちゃんに与えるという構造です。ここで知っていてほしいのは、エストロゲンとプロゲステロンというホルモンが関わっているということです。
 自分で検診する時、特に閉経前の人は、時期によって乳房の緊満が起きるので、一番乳房の張りの少ない月経開始5~7日目ごろに触診することを勧めます。いつもその時期に触ってもらうことが重要です。閉経している方は、いつ触ってもいいことになります。

非浸潤癌と浸潤癌

非浸潤癌と浸潤癌

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 がんは、「非浸潤がん」と「浸潤がん」という2種類に大きく分けられます。「非浸潤がん」は、取ってしまえば再発しないがんです。ただし、見つかる乳がんのほとんどは、「浸潤がん」というタイプです。
 「浸潤がん」は、基底膜という膜をがん細胞が破って外に出ると、周りにある血管やリンパ管に入って流れてリンパ節、骨、肺、肝臓、脳などに転移する可能性があります。


3.早期発見の重要性~検診について

 まず、診断に入る前に、早期発見の重要性からお話を始めます。検診の意味がないとの週刊誌等の記事をご記憶の方もいるでしょう。やはり、検診は必要です。ただし、きちんとした検診をしなければ意味がないと思います。

検診は2種類に分けられるのをご存知ですか?

検診は2種類に分けられるのをご存知ですか?

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 皆さん、「検診」には2種類あるのをご存じですか。
 対策型検診(いわゆる住民検診)と、任意型健診(人間ドックのようなもの)があります。対策型検診は公的資金、つまり税金が使われているのに対して、任意型は自己負担ですから、あくまでも個人の問題で時期も内容も自由です。対策型検診は、対象集団の死亡率を下げることが目的です。つまり日本国の、40歳以上の女性の乳がんによる死亡率を下げるために、2年に1回、国が実施しているわけです。
 ところが、乳がん検診の受診率の低さが大きな問題になっています。
 集団健診で死亡率を下げるには、その集団の6~7割以上受診しないと効果は表れないとされている中で、受診率が30%にも達していない実態があります。そこで、クーポンを発行したりして宣伝しているわけですが、さらにムダな税金を投入するなど論外であり、対象者の意識改革を望みます。

検診で早く見つければいいのか?~病期と予後

検診で早く見つければいいのか?~病期と予後

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 では、病期と予後を見てみましょう。2004年度全国乳癌登録より、ゼロ期、1期、2期、3期、4期の方々のその後の生存率を示しました。4期とは見つかった時に既に転移のある方です。乳がんと診断された際のステージが早いほど、予後はいいというのは明らかですね。そういう意味で、検診は受ける意味があります。


4.早期発見に向けて、診断方法は?

1)視触診
 症状を自覚して病院に行き、がんと診断され、治療をされた方たちは62%。6割は自分で何らかの異常を感じているわけです。病院に行かない人たちがいる一方で、5ミリほどの小さいしこりを見つけて来る人もいるので、日頃からきちんと自分で触診することが大事です。
 発見時、早期乳がんは約半分です。もちろん、より多くの方々が早期で発見できればよいのですが、3期、4期で発見される数はなかなか減りません。現実には、すごく大きくなって、皮膚から外へ出たり、出血したりして初めて病院に来る方は、私の経験では20年前と今と人数に変わりはありません。いくら言っても検診には行かない人たちというのは、行けない事情もある人たちなんですね。ですから、そこはがん教育をきちんと行い、検診の必要性をもっと早くから伝えておくことが必要だと思います。

マンモグラフィ

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2)マンモグラフィ
 マンモグラフィは、乳房を挟んで検査します。若い人の多くは乳腺が厚く、診断すべき画像が白くなってしまうことが多く、閉経後は、黒っぽく写ります。年齢によって画像に差が出てくる。これはちょっと覚えておいてください。
 マンモグラフィでは石灰化がわかります。石灰化だけでみつかる乳がんは、触診では見つかりません。マンモグラフィの得意なところです。

3)超音波
 超音波検査機器は、年々レベルが上がって、高精度の新しい機械が出てきています。コンパクトな装置ですから、超音波の強みは、いつでもどこでも検査でき、痛みがない、ということが一番だと思います。
 ただし、超音波検査は客観性に欠けます。マンモグラフィは1つの乳房を1枚の画像に取り込むためどこでも診断できます。しかし、超音波検査は撮影者の技量によって、診断に差が出る可能性があります。
 このように、超音波とマンモグラフィ(MMG)には、それぞれ得意、不得意があります。
 若い人の乳房は、マンモグラフィでは真っ白に写ってしまうので見にくい。それゆえ、若い人にはマンモグラフィ検査は勧められないわけです。超音波は逆に、乳腺が無くなり脂肪ばかりの人は見にくいわけです。ですから年齢によって使い分けができるということです。

超音波を検診にとりいれては?

超音波を検診にとりいれては?

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 近年、40代で乳がんと診断される方が多くなったため、40代に超音波の検診を取り入れるという最新情報があります。
 これは世界で初めて日本が実施・発表した大規模な臨床試験(J-START)です。世界で最も権威のある媒体の一つ『The Lancet』誌に掲載されました。40代を対象に、マンモグラフィに超音波の検診を足すと、成績が上がるかということが課題です。
 その結果を端的にお話ししますと、40~49歳の女性では、マンモグラフィに超音波を追加すると、乳癌を発見する割合が増加し、0.32%が0.5%になる。

J-STARTの結果

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 また、早期乳癌が増加し、中間期癌が減少する。中間期とは2年に1回のマンモグラフィ検診の間に見つかるがんです。つまり、もっと小さいうちに超音波検査で見つけ出したことになります。
 しかし超音波検査も実施したことで、要精査率が上がりました。いわば、受けなくていい人にも追加の検査をしたことになります。
 それから、今回は追跡の期間がまだ十分ではないので、死亡率の減少の結果がまだ出ていないため、まだ、国が行う対策型検診には取り入れられないということです。
 この成果も報道されましたが、超音波の検診が若い人にいいとした間違った報道が多数ありました。現時点ではそうではないということをしっかり知ってほしいですね。

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