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毒性が強いボツリヌス菌食中毒について~レトルト類似の真空パック食品に注意~

トピックス : 食品等の検査

2013年5月29日
東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
東京顕微鏡院 理事 伊藤 武

ボツリヌス菌は缶詰、ビン詰、真空包装食品などの嫌気的な食品で発育する病原菌で,欧米諸外国ではソーセージやハムによるA型やB型ボツリヌス菌食中毒が既に1890年後半から1900年初期に明らかにされていました。

国内でのボツリヌス菌食中毒の発見は遅く、1951年に北海道の岩内町で鰊のイズシを原因食品とするE型ボツリヌス食中毒により、14名が発症し内4名が死亡した事件が最初です。それ以降国内のボツリヌス食中毒は、北海道、青森県、秋田県、岩手県、福島県などで喫食されている魚介類の発酵食品であるイズシを原因食品とするE型菌食中毒が主体でした。

ところが、近年になり、真空包装食品や缶詰によるA型ボツリヌス菌による集団例や散発的な発生が多発してきました。よって本稿では、真空パックなどの容器包装詰食品のボツリヌス食中毒予防について述べます。

ボツリヌス菌の特徴

1)ボツリヌス菌の型と土壌中の分布

ヒトや動物から検出されたボツリヌス菌はボツリヌス毒素の特徴からA型、B型、C型、D型、E型、F型、G型の7つの型に分類されます。これらのボツリヌス菌は全世界に広く分布しており、地域により分布する型に特徴がみられます。米国、カナダ、ロシア、欧州では耕地などの土壌などにA型菌、B型菌が分布しますが、国内では極めてまれです。従ってこれらの地域ではA型やB型による人のボツリヌス食中毒の報告がみられます。

E型菌は全世界の湖や海岸に広く分布していますが、特に米国とカナダにまたがる5大湖、米国の海岸、日本の北海道の河川や湖、海岸、十和田湖、琵琶湖などに分布しています。国内のボツリヌス食中毒の型はほとんどがE型菌でした。

C型菌とD型菌も全世界の河川を中心に広く分布していますが、汚染頻度は地域差が高いことで知られています。C型菌は鶏、野鳥、ミンクに、D型菌は牛に食中毒を引き起こしますが、ヒトには感受性が低いために食中毒例はほとんどありません。

2)ボツリヌス毒素

ボツリヌス菌は嫌気的な食品において増殖する際、毒素(ボツリヌス毒素)が産生されます。この毒素が神経伝達物質であるアセチルコリンに作用して、神経と筋肉の伝達を遮断するため、麻痺症状を起こします。自然界に存在する毒素では最も強毒で、ふぐ毒の1,000倍以上であると云われています。

3)熱に強いボツリヌス菌芽胞

本菌は耐熱性の芽胞を形成しますが、ボツリヌス菌の型により熱抵抗性が異なります。タンパク分解性のA型菌やB型菌芽胞は熱抵抗性が高く、121℃、4分以上の加熱でなければ死滅しません。E型菌は熱抵抗性が弱く80℃、10分で死滅します。

表1:ボツリヌス菌の特徴

ボツリヌス菌食中毒の発生状況

国内のボツリヌス菌食中毒は1951年から2012年までに120事例報告され、うち104事例(86.7%)は魚介類の発酵食品であるイズシを原因としたE型菌です。13事例はA型菌、3事例がB型菌になります。特に近年ではA型菌による散発事例が多く、原因食品はパックされた加熱食品や缶詰が4事例、輸入品が2事例で、残念ながらほとんどの事例は原因食品が明確にされていません。

表2.国内におけるA型およびB型ボツリヌス菌食中毒の発生状況

容器包装詰加圧加熱殺菌食品(レトルト食品)のボツリヌス菌食中毒防止

ボツリヌス菌食中毒の予防の原則は以下の3点です。

  1. ボツリヌス菌汚染防止
  2. 芽胞が死滅する温度で加熱
  3. ボツリヌス菌が増殖する可能性のある食品は10℃以下の低温保存

pH4.6以上、水分活性が0.94を越えるレトルト食品はボツリヌス菌が増殖する可能性があり、A型ボツリヌス菌芽胞が死滅する120℃、4分以上の加熱が必要です。当然、野菜などの原料は充分に洗浄し、有害細菌を除去しなければなりません。

従ってレトルト食品はO157やサルモネラなどの食中毒菌はもちろん、あらゆる型のボツリヌス菌も死滅していますし、腐敗菌も死滅していることから、常温流通でも安全で広く普及しています。

レトルト食品類似の真空包装食品のボツリヌス食中毒防止

レトルトパウチで包装された食品は、必ずしも上記の容器包装詰加圧加熱殺菌食品とは限りません。近年、ボツリヌス菌食中毒の発生例が多い容器包装食品は、ボツリヌス菌の増殖が可能な食品が多く含まれています。

食品のpHが4.6以上、水分活性が0.94以上であって、ボツリヌス菌芽胞が死滅する120℃、4分以上の加熱が施されていない容器包装に密封した食品(レトルト食品類似の真空包装食品)はボツリヌス菌芽胞が生残している可能性が高く、嫌気環境であるためにボツリヌス菌の増殖の危険性が高くなります。これらの食品は生産から消費までボツリヌス菌が増殖しない10℃以下に保存しなければなりません。 

また、製造業者は消費者に保存条件がわかるような大きさの文字と色などで工夫した表示を行う必要があります。

販売者・消費者の側では、レトルト類似食品や密封された容器包装食品は必ず表示を確認し、容器包装詰加圧加熱殺菌食品(レトルト食品)か類似の真空包装食品かを区分すること、後者の食品であれば表示に従って10℃以下に保存する、また、E型ボツリヌス菌は4℃でも増殖できることから期限表示(賞味期限)を守ることなどが重要です。

 


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