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残留農薬規制の歴史と検査について

トピックス : 食品等の検査

2019年5月22日
一般財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
検査事業本部長 宮田 昌弘

使用の歴史

農薬使用の歴史(図1参照)を振り返ると、世界では、はるかメソポタミア文明まで遡り、「イオウ」を使用したようです。日本では、江戸時代に鯨油が害虫駆除に用いられたとされています。

図1 農薬使用の歴史(食品安全委員会資料より)

その後、鯨油は高価なことから、代わって菜種油や石油を用いた注油駆除法が広く行われたようです。石油で駆除?どうやって?実際は水田に油を注ぎ、その油膜にウンカ類等の害虫を払い落として害虫の気門を塞ぎ窒息死させるというものです。

その他にも、蚊取り線香で有名な除虫菊の成分(ピレトリン)やボルドー液(塩基性硫酸銅)などの天然物や無機化合物を主体とする農薬も使用されていました。第二次世界大戦後になると、DDT、BHCやドリン剤などの有機塩素系殺虫剤や、パラチオンなど有機リン系殺虫剤、さらには有機水銀殺虫剤などの有機合成農薬が輸入され広く使用されました。

これら、農薬は殺虫効果が高く、農作物の安定供給に貢献しましたが、人畜に対する急性毒性が強く、中毒事件が少なからず発生しました。また、残留性も高く、環境汚染や食物連鎖による生物濃縮が問題となり世界各国で規制措置がとられ、日本では1970年代に相次いで使用されなくなりました。

一方、農薬を全く使用しないと農作物の収穫量に大きく影響することより(図2参照)、現在では環境や他の生物への影響に配慮した農薬が開発され、使用されています。

図2 農薬を使用しなかった場合の収量(食品安全委員会資料より)

規制の歴史

食品衛生法による農薬に対する残留基準は、1968年(昭和43年)に有機塩素系農薬であるDDT、BHC、パラチオンなどに初めて設定されました。それから、1978年(昭和53年)までに53種類の農作物と26種類の農薬との組合せで設定されましたが、その後しばらく基準改正はありませんでした。

ところが、2002年に中国から輸入された冷凍ほうれん草から、残留基準値を大きく超えるクロルピリホスが検出されました。また、有機塩素系農薬等の基準値超も散見され、2006年残留農薬等ポジティブリスト制度導入の契機となりました。

今までの原則自由で「残留してはならないもの」を示すいわゆるネガティブリストから、原則すべてを禁止し「残留を認めるもの」のみ示し、使用及び残留規制を厳しく改めました。

ポジティブリストの導入により、約800種類の農薬等について基準値が設定されています。基準値が定まらない品目については一律基準として残留基準値が0.01ppmとなっています。

検査の必要性

ポジティブリスト制度導入により、生産者は必要最低限の農薬を薬効にあわせて使用することが求められます。そして、販売者や輸入者はその残留量を確認することにより、食品衛生法に見合った農作物を消費者に提供することができます。

その残留量を確認する手段が残留検査の実施です。

800種類の農薬等に基準値が設定されたことより、一つ一つ農薬等を分析していたら検査結果まで途方もない日数を要します。そこで、一度にたくさんの農薬を効率よく分析する、すなわち、多成分を同時に一斉に分析する手法が必要です。特に海外では国内より使用される農薬も多岐にわたることより、多種類の農薬の残留を確認することが必要です。

一方、一律基準0.01ppm(※)の農薬を分析することは容易ではなく、高度な分析機器や精度を保つ技術が必要です。また、農薬分析には有機溶媒という化学薬品を多量に使用します。使用済みの化学薬品は廃棄に手間がかかり環境汚染の一因となることより、有機溶媒を可能な限り少ない量で検査することも考慮する必要があります。

以上を鑑みますと残留農薬分析は微量、精度、多成分一斉分析、環境汚染配慮がキーワードとなり、目的に合わせた検査法の選択が肝要になります。

東京顕微鏡院では、信頼性の高い検査を販売者、輸入者などの皆様の目的に合わせ提案できるよう体制を整えています。是非一度ご相談ください。

(※)0.01ppmってどのくらい?
1ppm(parts per million)は百万分の一。0.01ppmはさらにその百分の一。
例えば、食品1トンに農薬0.01g。イメージとして、25メ-トルプールに農薬数滴。
もっとわかりやすく、1億円のうちの1円。それだけ微量ということです

 


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