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食物アレルギーとは何?

トピックス : 食品等の検査

2012年10月31日
財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
食品理化学検査部 部長 中里光男

はじめに

スーパーやコンビニで弁当や菓子類などの加工食品を購入した際、原材料表示の中に「原材料の一部に乳成分を含む」とか、「本品の原材料には卵、豚肉、大豆が含まれています」というような記述があるのに気付く人は多いと思います。しかし、その意味・理由まで理解している人は少ないのではないでしょうか。これは食物アレルギー疾患を持っている人々に対する注意表示であり、大変重要なものです。

食物アレルギーとは

食物アレルギーとは食物を摂取したときにそれに含まれる食物抗原(アレルゲン)に対する免疫学的反応によって生体に障害を引き起こす反応をいいます。多くは食物を摂取してから2時間以内で症状が現れる即時型アレルギー反応を示しますが、それ以上の時間を要することもあります。健常な人ならば問題はなくても、アレルギー体質の人の場合には、特定のたんぱく質に対して抗原特異的IgE抗体(免疫グロブリンE)を作りやすい免疫傾向があります。IgE抗体は人を含む哺乳類の粘膜下組織や結合組織に存在して炎症や免疫反応などの生体防御機構に関わるマスト細胞(顆粒細胞、肥満細胞ともいう)の表面に結合します。このIgE抗体に食物抗原が結合し、さらに抗原を介してIgE抗体2分子が架橋されると細胞膜酵素が活性化され、ヒスタミンやロイコトリエンなどが遊離されます。

これらによって血管透過性の亢進や粘液分泌亢進、平滑筋の収縮等が起こると考えられています。その結果、目の充血、顔面紅潮や皮膚のかゆみ、蕁麻疹、せき、鼻水、鼻づまり、呼吸困難、腹痛、下痢など様々なアレルギー症状が起こることになります。特に呼吸困難、血圧降下、意識を失うなど、急性のショック状態を伴う反応をアナフィラキシーショックと呼び、命にかかわる場合もあります。

食物アレルギーの原因食品

わが国における食物アレルギー体質を持つ人はおおよそ、全人口の1~2%と考えられています。特に若年層での比率が高く、平成21年度の日本保育園保健協議会の全国調査によると0歳児が7.7%、1歳が9.2%、2歳が6.5%、3歳が4.7%、4歳が3.5%、5歳が2.5%という結果が得られています。

年齢が上昇するにしたがって減少していく顕著な傾向が見られます。原因となる食品は年齢層によって異なり、厚生労働科学研究班による「食物アレルギーの診療の手引き2005」によると、0歳児では鶏卵が最も多く62%と患者の約6割を占めています。以下、乳製品(20%)、小麦(7%)が主な原因となっています。

年齢が上昇するにしたがって食生活もバラエティーになり原因となる食品も多様になってきます。1歳児では鶏卵(45%)、乳製品(16%)だけで患者の約6割を占めますが、以下、小麦(7%)、魚卵(7%)、魚類(5%)等が主な原因食品となっています。4~6歳児では鶏卵(23%)、乳製品(19%)、甲殻類(9%)、果物類(9%)、落花生(6%)等が主な原因食品となっています。

一方、20歳以上では甲殻類(18%)、小麦(15%)、果物類(13%)、魚類(11%)、そば(7%)が上位を占め、鶏卵や乳製品の患者が減り、甲殻類や小麦の患者が増加するという特徴があります。このように原因となりやすい食品は年代によって種類に違いが見られ、乳幼児の食物アレルギーの原因となる鶏卵、乳製品はその後の加齢とともに耐性を獲得していき、成人では少数になります。

一方、学童、成人で新規発症する甲殻類、小麦、果物、魚類、そば、落花生等は耐性が得られにくいとされています。このような食物アレルギーには有効な治療法がないため、原因となる食物を食べないことが予防・治療になることはいうまでもありません。

食品のアレルギー表示

厚生労働省では食物アレルギーの原因となる食品の調査を実施し、平成13年発症件数の多いものや、症状が重いものについて、食品に使用した場合の表示を食品衛生法によって義務付けし、アレルギー体質を持つ人に対して情報を伝達・提供することにしました。

表1に原因となる食品と表示の理由を示しましたが、卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生の7種については厚生労働省令によって表示が義務化され、これらは「特定原材料」と呼ばれています。あわび、いかなど18種については厚生労働省通知によって表示をするよう奨励することになりました。

表1.アレルギーの原因となる食品と表示の理由

表示の仕方にはいろいろありますが、厚焼玉子などが使われている場合、明らかに卵が原料であることが分かるので改めて卵使用という表示がない場合があります。このように原材料名から何が使われているかわかる場合には表示は省略してもよいことになっています。

一方、原材料の中でよく見かける「調味料」は組成がアミノ酸液であるならば表示は特に必要ありませんが、えびのエキスが使われているならば「えび」が原材料として使用されている旨の表示をしなくてはなりません。

使用する原材料中にもともと入っているものでも、最終製品まで持ち越される場合は表示をしなくてはなりません。表示の方法は原材料ごとにその中に使われているものが表示されている場合と、使ったすべての原材料の後にまとめて表示されている場合もあります。また、店内売りや量り売りなどの対面販売では原材料そのものの表示がない場合があります。

このような場合はお店の人にその場で確認しましょう。さらに「本製造工場では小麦を含む製品を製造しています」というように、他の製品からの混入の可能性があることを示しているものもあります。表示の仕方や方法はいくつかありますが、どのような形にしても食物アレルギーの人にとっては重要な情報に違いありません。

おわりに

食物アレルギーの概要について述べてきましたが、食物アレルギーの表示の重要性がお分かりになったものと思います。すなわち、食物アレルギーの治療・予防として原因食物を摂取しないことが最も有効ですが、アレルギーに関する表示は食品を選択するのにとても重要な拠りどころになっています。これらの表示が適正かどうかを確認するため、厚生労働省は特定原材料7種(卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに)について試験法を設定しています。

東京顕微鏡院・食と環境の科学センターでは特定原材料7種の検査を受託しています。

(元東京都健康安全研究センター 食品添加物研究科長、薬学博士)

 


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