一般財団法人 東京顕微鏡院 > 食と環境の科学センター > 衛生点検とHACCP > トピックス : 衛生点検とHACCP > 食品微生物検査と精度管理

食品微生物検査と精度管理

トピックス : 衛生点検とHACCP

2017年8月7日
一般財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
信頼性保証室 平井 誠

1. はじめに

 私たち検査機関がお客様から信頼を頂くためには、試験検査の全ての段階において科学的で合理的にわかり易く説明できる根拠と能力が求められます。
 今回のコラムでは、食品微生物検査における細菌数の検査結果が妥当であることを説明する根拠の一つとなる内部精度管理について信頼性保証室に関わる立場から考察します。

2. 微生物検査の難しさ

 微生物検査の精度管理が話題になるとき、「理化学検査とは違って、生き物を扱っているから・・・。」と、なんとなく意見が一致します。対象となる微生物が試験品に不均一な分布をして、マイクロフローラ(細菌叢)や損傷菌の存在なども連想するためでしょう。
 さらに検査の方法が、検査項目を定義することもあり、検査結果の精度が検査員の知識や経験などの技能に依存する場合があることです。
 このようなことから検査結果の妥当性を確保するためには、検査員の教育訓練や外部精度管理調査結果の確認および日頃の内部精度管理結果の評価と検証が大切になります。

3. 精度管理の方法

 内部精度管理とは、“結果を提出するために十分な信頼ができるかを判断するために、操作及び測定結果を継続的に監視するための試験所スタッフによる一連の手順”として国際的な食品規格であるCodexのガイドライン1)に示されています。
 わが国では、平成9年に当時の厚生省の通知2)により食品の微生物学的検査における精度管理の方法が示され、一般細菌数の検査等の試験品では回収率、陰性対照及び培地対照、平均値及び標準偏差によるzスコアの算出が求められました。ここでは回収率(真度:かたより)とzスコア(精度:ばらつき)の評価について述べるまでとします。

(1) 回収率による確認

 「検査等を実施する都度、既知の微生物を含む試験品については回収率、・・・を確認すること。」として、回収率を少なくとも70 % から120 % を目安にすることが求められています。しかしながら、他の成書3)では、寒天培地の集落計数法の回収率は50 % から 200 % を目安とすることが妥当ともされています。いずれにせよ、日頃の回収率のデータを継続的に集計し、自ら基準値を定めて、変動要因の有無を確認し、検査結果の妥当性を評価することが重要であると考えます。

(2) 平均値及び標準偏差によるzスコアを算出

 「既知の微生物を含む試験品の検出値について、zスコアを算出して記録すること。」が求められていますが、目標値などは示されていません。
 回収率と同様にzスコアでも日頃のデータ集計と自主的な基準値の設定が必要となります。なお、国際的な外部精度管理調査機関である “ Fera Science Ltd ” によるfepasの技能試験レポート4)では、その菌数濃度に関わりなく標準偏差(σp)を0.25 log10 cfu/gと定めており、内部精度管理におけるzスコア算出の参考になると思われます。

4. 精度管理に関する考察

 ISO/IEC 17025:20055)では、「5.4.6.2 試験所は,測定の不確かさを推定する手順をもち,適用すること。」としています。測定の不確かさとは、真の値は不可知であることを前提に測定のばらつきを表すパラメータ6)と解釈することができます。この測定の不確かさの推定について内部精度管理データを利用した算出事例が ISO/TS 19036 7)に紹介されています。
 私ども信頼性保証室では、この事例を参考に年度毎の細菌数の検査結果を内部精度管理データとして利用する併行精度(繰り返し精度)の確認に取り組んでいます。この併行試験結果に基づいた精度(ばらつき)を評価することは、ご依頼を頂いた検査結果の妥当性を確認できる一つの方法と考えています。精度管理が統計数字にとらわれることなく、現状に即した判断と継続的な改善の糧とすることが大切と考えます。

5. おわりに

 現在の食品の国際的な流通により従来から検査機関に求められてきた「正確、迅速、廉価」はもとより、これからは、試験検査の目的に適切な試験法を採用し、安定的で妥当な結果を継続的な監視と改善によって提供できる能力が国際的に求められます。ISO/IEC 17025:2005の序文では「この規格は、・・・技術的に適格であり、かつ、技術的に妥当な結果を出す能力があることを実証しようと望む場合」と記されています。このような能力を実証する姿勢は、試験検査機関の国際的な第三者認定の有無を問わず、説明責任を果たす上で当然のことです。
 このような私たちの考え方と挑戦が、お客様からの信頼につながるものであり、もって食の安全確保に寄与できるものと考えます。

以上


≪参考文献≫

  1. HARMONIZED GUIDELINES FOR INTERNAL QUALITY CONTROL IN ANALYTICAL CHEMISTRY LABORATORIES  CAC/GL 65-1997
  2. 平成9年4月1日 衛食第117号 「食品衛生検査施設等における検査等の業務の管理の実施について」別添「精度管理の一般ガイドライン」
  3. 食品衛生検査指針 微生物編 2015
  4. FAPAS – Food Microbiology Proficiency Test Report
  5. ISO/IEC 17025:2005 「試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項」
  6. GUIDELINES ON MEASUREMENT UNCERTAINTY  CAC/GL 54-2004
  7. ISO/TS 19036 First edition “Microbiology of food and animal feeding stuffs – Guidelines for the estimation of measurement uncertainty for quantitative determinations ”
HACCP・食品衛生相談についてのお問合せ先
一般財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
食品安全サポート部 TEL:03-3534-2971 FAX:03-3534-2975

トピックス一覧へ 

ダウンロード
検査依頼書
食と環境の科学センター
【 豊海研究所 】
〒104-0055
東京都中央区豊海町5-1
豊海センタービル4F
TEL: 03-3534-2970
FAX: 03-3534-2975

【 立川研究所 】
〒190-8535
東京都立川市高松町1-100-38
TEL: 042-525-3176
FAX: 042-525-3645
簡易専用水道専用
TEL: 042-525-3186

【 市ヶ谷本院 】
〒102-8288
東京都千代田区九段南4-8-32
市ヶ谷本院5F
TEL: 03-3238-2137
FAX: 03-3238-2153
関連施設
ページの先頭へ戻る