レジオネラ症

 財団法人東京顕微鏡院 技術顧問 岡本 繁雄
2012/1/27

1.レジオネラ症の病型

 レジオネラの名前は、昭和51年に米国ペンシルバニア州で開催した在郷軍人会(legionnaire)から由来しています。レジオネラ症の病型と症状はレジオネラ肺炎とポンチャク熱で、同じ病原体なのに何故、2種類あるかは不明です。その症状を次に示します。

レジオネラ肺炎
ポンチャク熱
1.劇症肝炎:一週間程度で死亡することもある。
1.熱性疾患:感冒症状、多くの場合自然治癒、
2.潜伏期:2~10日
2.潜伏期:1~2日
3.症状:発熱、悪寒、咳、呼吸困難、倦怠感、頭痛、筋肉痛、意識障害、神経症状
3.症状:突然の発熱、悪寒、呼吸器症状は軽度、頭痛、予後は良好
適切な化学療法(ニューキノロン系、リファンピシン系、テトラサイクロン系)が不可欠

2.レジオネラ属菌の症状

レジオネラ属菌の48種の代表菌種はLegionella pneumophilaで長さ2~20μ、幅0.3~0.9μ、水環境を中心とした生活環境(土壌、河川、湖沼など)に広く存在しています。繁殖の至適温度は36℃前後ですが、2時間に1回、細胞分裂し、他の細菌の30分間に1回より時間を要します。

特徴は細胞内増殖菌なので、ヒトではマクロファージ(食細胞内)、自然界ではアメーバ内で増殖します。ヒトへの感染経路は経気道感染でエアロゾル(気泡)の吸入です。ヒトからヒトへは感染はしません。感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律の第4類(A型肝炎、E型肝炎など)です。

3.レジオネラ症防止対策の基本

アメーバ内にレジオネラ属菌は生存しますので、風呂の配管内、加湿器内の生物膜などを定期的に掃除します。風呂でのジャグジー(気泡槽)によるエアロゾルには注意が必要です。空気調和設備の冷却塔を1回/年、清掃、1回/月の点検です。

ビルなどの循還式給湯設備は貯湯槽内の水温を60℃以上、末端給水栓で55℃以上あればレジオネラ属菌は生存できません。

4.レジオネラ属菌の法規制

建築物における衛生的環境の確保に関する法律や公衆浴場法で設けられています。

公衆浴場法の浴槽水(平成14年10月29日付、健発第1029004号、厚生労働省健康局長通知)の水質基準では、レジオネラ属菌は10CFU/100mL、未満としています。水質検査は1回/年、行うことになっています。公衆浴場(銭湯)では、浴槽水付近に検査結果、検査機関、検査日時などを掲示しています。検査結果が基準値を超えた場合は、知事に報告をすることになります。

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