2026.05.11
2026年5月11日
一般財団法人 東京顕微鏡院
理事 安田 和男
難分解性で残留性の高いペルフルオロオクタン酸(PFOA)やペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)などの有機フッ素化合物(PFAS)について、世界的な規制が強まる中、日本国内でも法改正やリスク管理に関する取り組みが進められている。
PFASの一部は現在製造・輸入・使用が禁止されているが、撥水性や耐熱性に優れるため、消火剤や調理器具に利用されてきた。血清コレステロールの上昇、ワクチン接種における免疫応答の低下などの生体影響との関連性が懸念されている。
本コラムでは、本年4月に施行された水道水の水質基準の概要と、国が全国調査を行ったPFASの実態調査結果を紹介する。
PFOS及びPFOAは、2020年4月に水質基準の「要検討項目」から「水質管理目標設定項目」へ移行されたが、環境省は水道水からの検出状況を踏まえ、水質基準に関する省令の一部を改正し*1、2025年6月に「水質基準項目」へ引き上げた。*2 *3 基準値はPFOS及びPFOAの合計値で0.00005mg/L(50ng/L)と定められた。
2026年4月1日の施行後、自治体や水道事業者はPFOS及びPFOAに関する水質調査を概ね3か月に一回実施すること及び基準値を遵守する義務が課せられる。さらに、国土交通省は水道事業を運営する自治体等に対し、検査結果が基準値を超えた場合、あるいは超えるおそれがある時は、住民らに速やかに情報を提供することや、飲用制限などの応急的対応、中期・長期的対応の具体的な行動手順を示している。*4
なお、毒性評価が未定なことや水道水中の検出実態が不明なことから、環境や健康への影響が懸念されるペルフルオロブタンスルホン酸(PFBS)、ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)等8物質を「要検討PFAS」として、「要検討項目」に追加している。
図1に、2026年4月1日現在の水道水の水質規制を示した。

図1 わが国における水道水質に関する基準等
☆要検討PFASとは、
ペルフルオロブタンスルホン酸(PFBS)、
ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)、
ペルフルオロブタン酸(PFBA)、
ペルフルオロペンタン酸(PFPeA)、
ペルフルオロヘキサン酸(PFHxA)、
ペルフルオロヘプタン酸(PFHpA)、
ペルフルオロノナン酸(PFNA)、
ペルフルオロプロピレンオキシドダイマー酸(HFPO-DA)
の8物質である。
消費者庁及び厚生労働省は水道水質基準の改正に併せ、2025年6月に清涼飲料水のうち「ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行うもの」について、成分規格を設定した。規格は、水道水質基準と同様にPFOS及びPFOAの和として0.00005mg/L (50ng/L)以下と定められた。*5
規格基準の設定に伴い、ミネラルウォーター類中のPFOS及びPFOAの個別試験法が追加され*6、さらに試験法の妥当性を確認するためのガイドラインの分析対象物質にPFOS及びPFOAが追加された。*7
2026年3月27日、環境省及び国土交通省は2024年度全国の公共用水域(河川、湖沼など)及び地下水中のPFOS及びPFOAの水質測定を行った集計結果を公表した。*8
測定地点は全国3,941地点であり、このうち26都府県の629地点で国の暫定目標値50ng/Lを超えることが報告された。最大値は大阪府鹿取町の地下水で73,000ng/Lで、暫定目標値の1,460倍であり、次いで岡山県吉備中央町の河川で72,000ng/L、大阪府摂津町の地下水で30,000ng/Lと高い値が検出されている。
なお、暫定目標値を超えた地点については、飲用を控えるなどのばく露(摂取)防止の取り組み等が実施されていると報告されている。*9
今後は環境や生体へのリスクを考え、PFASのうち優先的に評価すべき対象の選定を進め、毒性評価や実態調査等を実施して多くの情報や知見を収集することが望まれる。
さらに、公共用水域や地下水の約16%で暫定目標値を超えたことから、経年的な継続調査とともに、発生源調査や使用履歴調査など一層進める必要があると考える。
当法人では水道法に基づいて、地下水等における有機フッ素化合物(PFOS及びPFOA)の分析を行っている。
*1)環境省:「水質基準に関する省令の一部を改正する省令」及び「水道法施行規則の一部を改正する省令」の交付等について 2025年6月30日
*2)環境省:水質基準に関する省令改正の概要について[PDF] 令和7年8⽉8⽇
*3)環境省:水質基準項目と基準値(52項目) 令和8年4月1日施行
*4)国土交通省:水道事業者等によるPFOS及びPFOA対応マニュアル 令和8年3月27日
*5)消費者庁、厚生労働省:ミネラルウォーター類におけるPFAS(PFOS及びPFOA)の成分規格の設定に関する食品、添加物の規格基準の一部改正について[PDF] (消食基第402号、健正発0630第5号) 令和7年6月30日施行
*6)消費者庁:「清涼飲料水等の規格基準の一部改正に係る試験法について」の一部改正について[PDF] (消食基第566号) 令和7年11月14日
*7)消費者庁:「食品中の有害物質等に関する分析法の妥当性確認ガイドラインについて」の一部改正について[PDF] (消費者庁次長 消食基第568号) 令和7年11月14日
*8)環境省:令和6年度 公共用水域水質測定結果及び地下水質測定結果について 2026年3月27日
*9)環境省:PFASに関する取組状況について[PDF] 令和8年4月
青字のリンクをクリックすると、WebページまたはPDFが開きます