最近の空気清浄機の性能と使用上の留意点

財団法人 東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
環境検査部 技術部長 瀬戸 博

清潔・健康志向の高まりとともに空気清浄機を利用される方が増えています。家庭用空気清浄機は2004年から2009年に465万台余りが生産され1)、保有率は除湿器・加湿機に次いで36.7%です2)。2009年春から新型インフルエンザの流行が懸念されたときも空気清浄機が注目されました。今回は、空気清浄機の性能と使用上の留意点についてまとめてみました。

空気清浄機の購入の目的

(社)日本電気工業会のアンケート調査によれば、空気清浄機を購入する動機は、「アレルギー・花粉症対策のため」「室内でペットを飼うようになった」「健康清潔空間を作る為」などが多く、「引越し、新築、リフォームした」というのもありました。また、空気中の汚れや臭いで気になるものは、ちり、ホコリ、ハウスダスト、ダニ、花粉、アレル物質3)、カビ、雑菌の他、生活臭、ペット臭、ホルムアルデヒドなど化学物質でした。このように、主にアレルギー対策でハウスダストや花粉を除去したい、また、シックハウスや臭い対策で化学物質を除去したいと考えて購入されていることがわかります。

空気清浄機の性能

空気清浄機の浄化能力は、「適用床面積」4)で表示されています。これは(社)日本電気工業会が定める試験法に従って算出されるもので、簡単に言えば、30分で空気の汚れをきれいにできる部屋の広さということです。空気清浄機には、いくつかの基本的な浄化装置が単独または組み合わせて用いられています。浄化方式と特徴を表1に示します。最近では、ファンにより強制的に室内空気を撹拌しながら浄化するタイプが大部分です。ファンを使わない“イオン式”は、1999年に公正取引委員会が誇大広告をしていた2社に対し、排除命令を行ったこともあり、ネット販売を除けば市場にはほとんど出ていません。

イオン機能については、各社の説明が大きく異なり、それが“独自性”とも思えますが、消費者には混乱を与えますので、きちんとした科学的データに裏づけられた浄化機構の説明が求められるでしょう。

浄化方式 特徴 (各社の説明より)
HEPAフィルター * 細菌も捕集できる。交換が必要。
ファイバーフィルター HEPAよりも目が粗いと考えてよい。脱臭効果をうたう製品もある。交換が必要。
活性炭フィルター 化学物質の吸着が期待できる。交換が必要。
電気集塵 高電圧により、ホコリなどを帯電させ電極に集める方式。フィルターを使わない。主に業務用に使用される。
イオン機能 “イオン式”と紛らわしいが、プラズマ放電などにより酸素や水をイオン化し、活性酸素(ヒドロキシルラジカル)の作用でウィルス、細菌、臭い物質などを抑制するとされている。メーカーによっては、高速電子を発生させ、ウィルス、細菌、花粉、有害化学物質に衝突させて分解すると説明している。
電解水(イオン機能) 水を電気分解して活性酸素(ヒドロキシルラジカル)を発生させる。イオン機能と同様のしくみで効果を発揮すると説明している。
光触媒 酸化チタンなどに光を照射することで化学物質を分解する。

*:HEPAフィルター High Efficiency Particulate Air Filterの略。粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を持つ。クリーンルームなどに使用されている。

使用上の留意点

空気清浄機メーカーは自社製品の浄化性能評価を第三者機関に依頼し、性能認定を受ける傾向にあります。表示されている実験結果は、理想的な条件下での結果と考えておいた方がいいでしょう。お部屋の広さより多少ゆとりを持って大きめの「適用床面積」の機種を選ぶとよいでしょう。但し、風量が大きいと回転音が気になる場合があります。フィルターは使用するほど汚れるもので、交換する必要がありコストがかかります。一部の製品では自己浄化機能により何年も交換不要と強調しているものもあります。フィルターで捕捉できる粉塵、例えばハウスダストや花粉については「適用床面積」に応じて空気清浄機での浄化が期待できます。加湿機能を備えたり、ニオイセンサーやホコリセンサーが付加された製品もありますので、使用目的や条件に合わせて選びましょう。

一方、空気清浄機の中には「たばこの有害物質(一酸化炭素)は除去できません」、「常時発生し続ける建材やペットなどからのにおい成分をすべて除去できるわけではありません」、「各試験機関での試験ボックス内での試験結果であり、実空間での効果を検証したものではありません」と断り書きを入れている製品もあります。こうしたことからも空気清浄機に過大な期待をするのは考えものです。

また、空気清浄機とは違いますが、室内の除菌・脱臭の目的で「家庭用オゾン発生器」を使用される方がいます。国民生活センターは「使用方法によっては危険なオゾン濃度となるものがあり、また、オゾン発生量等の表示を見ても専門知識のない消費者が安全に使用することは難しいと考えられた。このような現状のもとでは、購入等は避けた方がよい」とのコメントを出しています5)。空気清浄機も内部で紫外線やプラズマにより有害なオゾンを生成することがありますので、空気清浄機から外部にオゾンが漏れないことを販売店やメーカーに確認する必要があります。


1) 経済産業省「生産動態統計」
2) インターネットコム、 goo リサーチによる「第6回家電に関する定期調査」
3) 「アレルギー物質」を意味する用語、家電業界などで使われる。
4) 適用床面積とは、(社)日本電気工業会規格(JEM 1467)に規定され、「自然換気回数が1 (1回/時間)の条件において、粉塵濃度1.25mg/ m3の空気の汚れを30分でビル衛生管理法に定める0.15mg/m3まで清浄できる部屋の大きさ」と定義されています。
5) 家庭用オゾン発生器の安全性 平成21 年8 月27 日 独立行政法人 国民生活センター

http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20090827_1.pdf

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