新たに制定されたリステリア・モノサイトゲネスの成分規格

2015年4月3日
一般財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
微生物検査部 難波 豊彦

1.リステリア・モノサイトゲネスについて

今年3月、米国の有名酪農ブランドが、アイスクリームの大量リコールを発表しました。米・食品医薬品局(FDA)の発表では、カンザス州の病院で同社のアイスクリームを食べた5名の患者がリステリア症の治療を受け、そのうち3名が死亡したとされています。

日本ではあまり聞いたことが無いリステリア菌による食中毒は、欧米では、集団事例が多数報告されており、米国では毎年約2500人が重症のリステリア症となり、そのうち約500人が死亡していると推定されています。

日本でのリステリア感染症の推定患者数は、内閣府食品安全委員会の評価書によると、年間200人(平成23年)とされています。

リステリアに感染して重症化することはまれですが、妊婦、高齢者の方は注意が必要です。食品由来によるリステリア症は、年間で100万人あたり0.1~10人と少数ですが、重症化すると致死率が高い疾患であることから、世界保健機関(WHO)でも注意喚起を行っています。

2.なぜリステリアについて成分規格ができたか

日本では、輸入される非加熱食肉製品(生ハムなどの加熱せずに喫食するもののみ) 及びナチュラルチーズ(ソフト及びセミソフトタイプのみ)については、検査でリステリアが検出された場合には、菌量によらず食品衛生法違反として製品の輸入を禁止してきました。

しかし、国際基準を策定しているコーデックス委員会では、食べる前に加熱を要さない調理済み食品(RTE食品)の基準値が平成19年に設定されたことから、国際的整合性を図る目的で、日本でもリステリアに係る基準値の設定について検討してきました。

リステリア・モノサイトゲネスの電子顕微鏡像 (東京都健康安全研究センターホームページより引用)

海外ではナチュラルチーズや非加熱食肉製品等の一部のRTE食品においてリステリア食中毒事例が見られ、その原因として不適切な取扱いによって高菌量の リステリアに食品が汚染されていたことが報告されています。 

国内の流通食品の汚染実態調査では、リステリア汚染は認められたものの、その菌量は 総じて低い状況でした。このため、厚生労働省は、従来から規制の対象となっている非加熱食肉製品及びナチュラルチーズについては、国際的な整合性と食品健康影響評価を踏まえた規制とする必要があると考え、成分規格として基準値100cfu/g以下を設定しました。(平成26年12月25日)


【参考】

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