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新型コロナウイルスと食品衛生について

トピックス : 食品等の検査

2020年6月1日
一般財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター 所長
検査事業本部長 宮田 昌弘

新型コロナウイルスの食品表面での生存能力は?

新型のコロナウイルス感染症(COVID-19)の病因物質は、コロナウイルスSARS-CoV-2です。感染源はコウモリである可能性が高く、種の壁を越えて他の中間宿主から人に伝播したと考えられています。*1)

世界各国の食品安全当局は、食品の表面でのウイルスの生存能力、および食品がウイルス伝播を媒介する恐れがあるか、情報を収集するため、国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)事務局とともに状況を注視しています。

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)や中東呼吸器症候群(MERS-CoV)などのコロナウイルス関連の過去のアウトブレイクからの経験では食品を介する感染は今のところないようです。

新型コロナウイルスとノロウイルスの違い

とは言え、一部のウイルスが食品を介して感染し、感染症を起こすことがあるのは有名で、日頃からノロウイルスの感染は食品取扱い事業者にとっては悩ましいことです。

新型コロナウイルスとノロウイルスは、表面の構成要素が異なる別々のウイルスです。新型コロナウイルスのカプジド(タンパク質の殻)は脂質のエンベロープに囲まれていて、石鹸や水で比較的容易に溶解させることができ、アルコール消毒が有効と言えます。一方、ノロウイルスのカプジドは脂質のエンベロープを持たないためアルコールで消毒効果が得られないことになります。

ノロウイルスは主に糞便から口への経路で感染すると考えられています。新型コロナウイルスも一部で感染者の糞便から検出された例もあるようですが、現時点でのエビデンスによると実際糞便からの感染はないようです。

コロナウイルスの特性

一般にコロナウイルスは冷凍状態で非常に安定しており、-20℃で最長2年間生存することが示されており、SARS-CoV及びMERS-CoVに関する研究では、温度、湿度、光などの様々なパラメーターの組み合わせ次第で、これらの様々の物質表面で数日間生存できることが示されています。*1)

一方、コロナウイルスは熱に不安定で、通常の加熱調理温度(70℃)に感受性があり、一般的な衛生対策同様、清潔、二次汚染防止、適温調理、即冷却に従うことが重要です。

SARS-CoVやMERS-CoVは一般的な衛生管理で対応可能で、SARS-CoV2がそれらと性質が異なるというエビデンスは今のところ見当たらず、ノロウイルスと比べ、食物由来の感染リスクは低いと言えるでしょう。


図1:コロナウイルス(国立感染症研究所資料より)
図1:コロナウイルス(国立感染症研究所資料より)

電子顕微鏡で観察されるコロナウイルスは、直径100nmの球形で、表面には突起が見られます。形態が王冠に似ていることからギリシャ語で王冠を意味する“corona”という名前が付けられました。脂質二重膜のエンベロープの中にNucleocapsid(N)蛋白に巻き付いたプラス鎖の一本鎖RNAのゲノムがあり、エンベロープ表面にはSpike(S)蛋白、Envelope(E)蛋白、Membrane(M)蛋白が配置されています(図1)。

ウイルスゲノムの大きさはRNAウイルスの中では最大サイズの30kbで、ウイルスゲノムの大きさは飛沫感染に大きく影響します。*2)


*1) 世界保健機関 コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する状況報告-32「食品に関連した考察」21.Feb.2020

*2) 国立感染症研究所 感染症疫学センター 10.Jan.2020感染症情報 国立感染症研究所 感染疫学センター資料より


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