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食品用器具・容器包装におけるポジティブリスト制度2020

トピックス : 食品等の検査

2020年11月18日
一般財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
理化学検査部 食品第2科 技術専門係長 永井 慎一郎

はじめに

食品用器具・容器包装については食品衛生法による法規制や業界団体の自主基準などにより安全性の確保を図ってきました。現在の食品衛生法の規格基準は、安全性に懸念のある物質について含有量や溶出量の限度値を設定しています。

このように使用が制限される物質を収載し、規制することをネガティブリスト制度と言います。ネガティブリスト制度では、規制対象になっていない物質については自由に使用でき、諸外国で使用が制限されている物質については、個別に規格基準を定めない限り直ちに規制ができません。

そこで、2020年6月1日から食品用器具・容器包装について安全が評価された物質を収載し、使用が認められた物質以外は原則禁止するポジティブリスト制度が施行されました。米国、EU、中国などがこの制度を導入しており、国際整合性の確保や我が国の食品の輸出促進等も見据えての導入となりました。

食品用器具・容器包装ポジティブリスト制度の対象範囲

食品用器具・容器包装とは製造、販売、調理、貯蔵などの際に使用され、食品と接触するものを指します。例えば、食品用器具としては、運搬用や貯蔵用のコンテナ・タンク・ボトル・バット、製造加工段階での製造装置・加工装置、調理用器具、食器等を指し、食品用容器包装は、食品または添加物を販売などのため授受する時に、食品と直接接触し使用されそのまま引き渡すものとしてペットボトル、瓶、缶などの食品パッケージと呼ばれるものが挙げられますが、以下の理由から、今回のポジティブリスト制度施行時は合成樹脂のみが対象となりました。

  1. 様々な器具及び容器包装に幅広く使用され公衆衛生に与える影響を考慮すべきこと
  2. 欧米等の諸外国においてポジティブリスト制度の対象とされていること
  3. 事業者団体による自主管理の取組の実績があること

合成樹脂以外の材質については将来的には対象となり追加されていく予定で、それまでは引き続き従前の規制が適用されます。合成樹脂についても後述の理由から引き続き従前の規制遵守が必要となっており、実際にはポジティブリスト制度が上乗せされて規制される形になります。

ポジティブリスト制度の対象または対象外となる合成樹脂を以下にまとめました。

 

対象となるもの

  • 熱可塑性プラスチック(加熱すると軟化し冷却すると固化するもの)
  • 熱可塑性エラストマー(弾性を持ち加熱すると軟化するもの)
  • 熱硬化性プラスチック(成形前は流動性があるが加熱すると固化するもの)

対象外となるもの

  • ゴム(熱硬化性エラストマー:弾性を持ち加熱しても軟化しないもの)
  • 紙に使用される合成樹脂のうち食品接触面に層が形成されていないもの(顔料塗工、外添薬剤、内添薬剤等)
  • ゴム(熱硬化性エラストマー:弾性を持ち加熱しても軟化しないもの)

なお厚生労働省では、ポジティブリスト制度の対象範囲となる合成樹脂を以下(図1)のように示しています。

図1 合成樹脂の対象範囲

合成樹脂を対象としたポジティブリスト制度

合成樹脂とは、ポリマーに様々な添加剤を加えて目的に合うよう成形されたものである為ポジティブリスト制度で合成樹脂の対象となる物質は、基ポリマーと添加剤等になります。基ポリマーとは合成樹脂の基本を成すポリマーとコポリマー(共重合体)を合わせたものであり、
(1) 基ポリマー(プラスチック) 約70樹脂
(2) 基ポリマー(コーティング等) 1000物質以上
(3) 基ポリマーに対して微量で重合可能なモノマー 約250物質
の3種類に分かれリストが作成されています。

添加剤等とは、合成樹脂の物理的または化学的性質を変化させるために最終製品に残存することを意図して用いられる物質になります(約2000物質)。触媒、重合助剤等最終製品に残存することを意図しない物質は添加剤等に含まれません。これらの物質は従前からの規格への順守が必須になります。

ポジティブリストでは基ポリマーをその特性(物理化学的性質)や使用実績を踏まえて、合成樹脂を複数の区分に分類し、区分に応じて添加剤の使用制限量を定めています。運用については合成樹脂ごとに組成、成分、含有量、使用条件等の情報を入手し、ポジティブリストと照合、適合の確認をする、というものになります。(図2)

図2 ポジティブリストの形式

製造管理と情報伝達

ポジティブリスト制度は添加量で管理される制度であることから、製造管理とその情報伝達により成り立っています。合成樹脂の器具・容器包装を製造、販売、輸入する事業者は販売する相手に対してポジティブリスト制度適合を確認できる情報を提供する義務があります。

したがって合成樹脂の原材料を製造、販売、輸入する事業者は器具・容器包装の製造業者から確認を求められた場合はポジティブリスト制度適合を確認できる情報を提供するように努めなければなりません。

ポジティブリスト未収載の物質について

ポジティブリスト未収載の物質を食品用器具・容器包装の食品接触層に使用する場合は新規登録が必要です。但し、食品非接触層については人の健康を損なうおそれのない量を超えて溶出し、又は浸出して食品に混和することがないように加工している場合は未収載物質を使用することができるとされています。

人の健康を損なうおそれのない量とは、食品中濃度として0.01mg/kgとされ、この値は食品疑似溶媒中濃度として0.01mg/Lと考えて差し支えないとされています。

経過措置について

2020年5月31日までに国内に流通していた合成樹脂に使用されていた全ての基ポリマーと添加剤(使用範囲も対象)については、2025年5月末まではポジティブリストに収載されているものとみなすことができるという経過措置が採られています。

未収載の物質についてはそれまでに登録を完了する必要があります。

おわりに

食品衛生法の改正により、ポジティブリスト制度が導入されましたが、合成樹脂製の食品用器具・容器包装の不純物や非意図的生成物については従前の管理方法(ネガティブリスト制度)で管理することになります。

また今回見送られた合成樹脂以外の食品用器具・容器包装についても同様にネガティブリスト制度が継続されますが、材質の確認作業が厳密になり事業者等の負担が大きくなります。当院では通常の検査事業に合わせて引続きポジティブリスト制度に関する情報を収集し、皆様に精確な検査データと情報の提供を行ってまいります。


(参考資料)
・厚生労働省 食品用器具及び容器包装のポジティブリスト制度について


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