ノロウイルス検査のために開発されたBLEIA法用採便容器の有用性

2017年10月11日
一般財団法人 東京顕微鏡院
食と環境の科学センター 臨床微生物検査部 主任 田原 麻衣子

糞便からのノロウイルス検出法として開発されたBLEIA法(生物発光酵素免疫測定法)は、簡便、迅速かつ多検体処理が可能であります。平成29年6月に改正が行われた「大量調理施設マニュアル」では、食品従事者のノロウイルス検査法は糞便1g当たり105コピーのウイルスが検出できる遺伝子法に限らずBLEIA法も対応できる検査法となりました。

当センターでは、感度が高く、短時間で多検体の処理が可能なBLEIA法を導入しておりますが、糞便の前処理に遠心沈殿と濾過などの工程があり煩雑でした。しかし、この点を改善したBLEIA法専用の採便管(BL採便容器)が開発された際に、従来の採便管とBL採便容器について作業時間、検査精度、操作性の比較検討を行いBL採便容器の有用性を評価しました。 今回は、この検討内容についてご紹介いたします。

1.従来の採便容器とBL採便容器による前処理方法

従来の採便容器による前処理方法は、①2%糞便懸濁液の作製②遠心22,000G、10分③フィルター付きスポイトで濾過④カップに上清を移すステップがあります。

BL採便容器による前処理方法では、BL採便容器に濾過するフィルターが組み込まれています。また、検査に必要な一定量の便を簡単な操作で採取することができます。採便棒の先端の溝が埋まるように糞便を採取し、採便容器に採便棒を戻します。そして、容器を縦に数回振ります。次に1,600G、15分間遠心し、濾液を採取し検査試料とします。

2.従来の採便容器とBL採便容器の作業量比較

表1に示すように従来の採便容器では前処理に5ステップかかりますが、BL採便容器では2ステップで検査試料が得られます。50検体あたりの作業時間が従来の採便容器では1人で60分かかっていたものが、BL採便容器では1人で20分と大幅に減少できます。

3.従来の採便容器とBL採便容器によるノロウイルス検出状況の検討

当センターの凍結保存糞便検体のうちRT-PCR法陽性50検体、陰性50検体で検討した結果は、従来の採便容器とBL採便容器のノロウイルス検出はすべて同じであり、検出率に差を認めませんでした。

4. BL採便容器の取り扱いに関するアンケート調査

当センターでボランティア採便を募り、BL採便容器のキャップの取り外しやすさ、糞便の採りやすさ、採便棒の挿入しやすさ、キャップの締めやすさについてアンケート調査を行い71名から回答を得ることができました。各項目について良好であると回答した人が90%以上であり、大きな問題指摘はありませんでした。

以上の検討から、BL採便容器は検査精度が従来法と同等であり、前処理作業時間が短縮され、極めて簡便であることを確認したことから、BLEIA法によるノロウイルス検査にはBL採便容器を導入しております。

(この内容については、平成27年11月開催の第37回日本食品微生物学会で発表を行いました。)

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