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遠山椿吉記念 第5回 健康予防医療賞 受賞者発表

遠山椿吉賞

遠山椿吉記念 第5回 健康予防医療賞 受賞者

このたび、たいへん多くの優れた研究テーマが応募されました。選考委員会による厳正なる審査を経て、当法人・医療法人合同の経営会議にて協議した結果、栄えある第5回遠山椿吉賞の受賞者を決定いたしましたので、発表いたします。

受賞された方々には、こころよりお祝い申し上げます。

遠山椿吉記念 第5回 健康予防医療賞

(副賞:100万円)
受賞者 辻 一郎
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野 教授
テーマ名 健康寿命の延伸に向けた疫学研究と政策提言

研究成果の概要

遠山椿吉記念 第5回 健康予防医療賞 山田和江賞

(副賞: 50万円)
受賞者
冨岡 公子
奈良県立医科大学県民健康増進支援センター 特任准教授
テーマ名
地域在住高齢者の健康長寿を規定する要因を
疫学研究によって明らかにする

研究成果の概要

※ 遠山椿吉賞応募者のうち、優秀な研究成果をあげており、これからの可能性が期待できる50歳未満の方に対して、平成27年度に「山田和江賞」を創設しました。「山田和江賞」は、当財団が戦後10年間休止していた事業を再建し、平成26年に享年103歳で亡くなられた故山田和江名誉理事長・医師の50余年の功績を記念して創設されました。

 

研究成果の概要:遠山椿吉記念 第5回 健康予防医療賞

受賞者
 辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野 教授)
テーマ名
健康寿命の延伸に向けた疫学研究と政策提言

背景

人口減少高齢化が進む日本の保健医療にとって、健康寿命(自立して健康に暮らせる期間)を延ばすことは最も重要な課題であり、厚生労働省「健康日本21(第二次)」や首相官邸「健康・医療戦略」などでも健康寿命の延伸が主要目標の1つに位置付けられている。

受賞者は、1991~93年の米国留学時に健康寿命という指標を知り、測定方法を学び帰国した。その後、健康寿命の延伸に向けた疫学研究を展開した。その結果をまとめて、1998年に『健康寿命((麦秋社)、2004年に『のばそう健康寿命』(岩波アクティブ新書)などの単行書を上梓して、健康寿命の周知に努めた。さらに、2011年に厚生労働省「次期国民健康づくりプラン策定専門委員会」委員長として健康日本21(第二次)の策定に貢献した。

調査・研究のねらい

平均寿命の延び以上に健康寿命を延ばすこと(その結果、不健康期間を短縮させること)は、国民の生活の質を向上させるだけでなく、社会経済的活力の向上と社会保障体制の持続可能性に対しても大きなインパクトを与えるものである。

そのため受賞者は、地域高齢者を対象とするコホート研究により、健康寿命の延伸に関連する生活習慣・生活行動などを解明する。さらに、各種の生活習慣や健康増進・疾病予防策が医療費・介護費用に及ぼす効果を分析し、健康づくりの投資効果を解明する。

健康寿命のさらなる延伸に向けて、遺伝要因・行動要因・臨床データを統合して「個別化予防・個別化医療」を推進するための基盤(ゲノム・コホート)を創設する。

これらのエビデンスに基づいて、健康寿命のさらなる延伸を可能とする社会(健康長寿社会)のあり方を提言する。

調査・研究の成果

1.健康寿命の延伸に向けた疫学研究

宮城県大崎市の高齢者約2万名などに対するコホート研究により、以下の知見を得た。

  • 適正な体重レベルの者では健康寿命が長い。肥満は骨関節疾患による要介護リスクを高め、痩せは認知症による要介護リスクを高める。
  • 運動習慣のある者では健康寿命が長い。40歳頃まで運動不足であっても、高齢期になってから運動するようになった者では健康寿命が長い。
  • 緑茶摂取頻度の多い者ほど、脳血管疾患・心筋梗塞や肺炎の死亡リスクが低く、歯周病や抑うつの頻度が低く、要介護や認知症の発生リスクも低い。
  • 日本食を多く摂っている者、茸類・柑橘類の摂取頻度の多い者ほど、要介護や認知症の発生リスクは低い。
  • 生きがいのある者では健康寿命が長い。
  • 残存歯数の少ない者ほど、死亡リスクや要介護発生リスクが高い。一方、残存歯数が少なくても、歯磨き・歯科受診などを実践している者でのリスクは減弱する。

2.健康づくりの投資効果に関する研究

宮城県大崎保健所管内の国民健康保険加入者約5万名を対象とするコホート研究により、各種の生活習慣が生涯医療費に及ぼす影響を検討し、適正体重や運動習慣のある者では平均余命が長く、しかも生涯医療費も少ないことを報告した。

健康日本21(第二次)の「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」という目標を達成すると医療費・介護費用が5兆円規模で節減されることを報告した。

【 受賞対象業績の概要説明 】

特に独創性、将来性、有効性、経済性、貢献度等について

受賞者は、1991~93年の米国留学時に健康寿命という指標に出会ってから「健康寿命の延伸」をライフワークとしている。当時、健康寿命という言葉を知る者は少なかったが、受賞者は健康寿命の延伸に向けた疫学研究と政策提言を20年以上も続けてきた。今日、健康寿命という言葉は多くの国民の知るところとなったが、それに対して受賞者は一定の貢献を果したものと自負している。

受賞者が行ってきた研究の成果は、健康日本21(第二次)や介護予防などのエビデンスとして活用されている。著書『健康長寿社会を実現する』での政策提言は、厚生労働行政に加えて、経済産業省「次世代ヘルスケア産業協議会」などでの議論にも反映された。健康づくりの投資効果を明らかにしたことは、社会保障体制を持続可能性に貢献するという点で重要な意義がある。

遺伝要因・行動要因・臨床データなどを統合した「個別化予防・個別化医療」により、健康寿命のさらなる延伸が期待されている。受賞者は、東北大学東北メディカルメガバンク機構の予防医学・疫学部門長として、15万人規模のゲノム・コホートの立ち上げに貢献した。

自らの研究により得られたエビデンスをもとに政策を提言し、その実現に努めることは、公衆衛生学徒にとって最大の責務である。受賞者は、著書などを通じて提言を行っている他、厚生労働省・厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会・部会長、同・がん登録部会・部会長、健康日本21(第二次)推進専門委員会・委員長を務めるなど、本領域の研究と実践に重要な貢献を果たしている。

 

研究成果の概要:遠山椿吉記念 第5回 健康予防医療賞 山田和江賞

受賞者
冨岡 公子(奈良県立医科大学県民健康増進支援センター 特任准教授)
テーマ名
地域在住高齢者の健康長寿を規定する要因を疫学研究によって明らかにする

背景

我が国は、2016年の総人口に占める65歳以上の人の割合(高齢化率)が27.3%と世界で最も高く、高齢化率が7%から14%に達するまでの所要年数も24年と高齢化の進行も世界で最も速い。さらに、「団塊世代」が75歳以上となる2025年には高齢化率は30%を超え、2060年には75歳以上が65・74歳の倍になると推測されている。日本は、高さ、速さ、深さのいずれにおいても、世界に類をみない高齢化を経験しており、国民の健康長寿(介護を必要とせず、生活機能が自立した状態で長生きすること)が喫緊の課題となっている。

調査・研究のねらい

本研究は、地域在住高齢者の生活機能の低下を予防する要因を疫学研究で明らかにして、健康長寿社会の実現に向けた政策の提案に貢献することを目的とした。そこで、受賞者は地域在住高齢者の生活機能を規定する要因として、①聴力障害、②趣味・生きがい、③社会参加、④主観的健康観に注目した。その理由は、これらの要因に関する先行研究は、死亡や要介護のリスクをアウトカム指標にしており、生活機能との関連は十分検討されていなかったためである。

特に、③社会参加に関しては、健康に良い影響だけでなく悪い影響も及ぼす、すなわち、両刃の剣となる可能性が指摘されているが、先行研究では高齢者の社会参加による負の側面はほとんど検討されていなかったため、社会参加の自主性に注目した。④OECD加盟国を対象とした2014年調査(OECD Health Statistics)によれば、日本は、平均寿命は83.7歳と最も長いが、主観的健康観が良いと回答した成人の割合は35.4%と韓国に次いで2番目に低い。主観的健康観は、死亡率や罹患率といった客観的健康指標では捉えられない健康の質的側面に関する情報を簡便に把握できる健康指標として世界的に注目され、日本でも国民生活基礎調査をはじめとして、各種社会調査で用いられている。長寿世界一の日本において、主観的健康観と健康長寿との関連を調査・研究する意義は大きい。

調査・研究の成果

受賞者は、地域在住自立高齢者を対象とした大規模コホート研究により、①自覚的難聴は、

生活の質や歩行能力と関連し、さらには「状況対応」や「社会的役割」といった高次な生活機能に悪影響を及ぼしていること、②趣味や生きがいの所有は、寿命だけでなく、歩行・食事・入浴などの身体的自立や、交通機関の利用・買物・金銭管理などの手段的自立にも影響を与えていること、③社会参加によって「状況対応」「手段的自立」や「認知機能」の低下を予防出来るが、その効果は性・年齢や社会活動の種類によって異なること、さらには自主的な社会参加は健康に恩恵をもたらすが、義務的な社会参加は健康を害する可能性があること、④主観的健康観は、慢性疾患の有無、心身の健康状態、そして社会活動への参加状況とは独立して、3年後の手段的自立の低下を予測すること、を明らかにした。

本研究成果は、エビデンスに基づいた健康長寿対策として、1)早期の段階から補聴器を含めた聴覚リハビリテーションを導入し自覚的難聴を改善させること、2)趣味活動や生きがい作りを推進すること、3)参加者の性・年齢・自主性に配慮した社会活動を勧めること、4)主観的健康感を維持・向上させること、を提案した。

【受賞対象業績の概要説明 】

特に独創性、将来性、有効性、経済性、貢献度等について

本研究の独創性は、1)高齢者に高頻度でみられるが、日本では『年のせいで仕方ない』と放置されることが多い聴力障害に注目した点、2)社会参加による健康影響の性差、年齢差、負の側面を示唆し、健康長寿により有効な社会参加の内容を明らかにした点、3)頻繁に使用されている主観的健康観が健康長寿の指標として活用できることを示した点、である。

趣味・生きがい、社会参加、主観的健康観は、現存する社会資源の活用や高齢者の潜在能力の開発・発揮であり、実現可能性が高く、限りある社会保障費の有効活用につながる。加えて、研究成果を調査フィールドの自治体に報告し、介護保険事業計画の策定にも貢献している。更に、研究成果を論文として公表したり、ホームページで公開したりすることにより、健康長寿施策の基礎資料として社会・国民に発信している。

受賞者は現在も、万単位の地域在住高齢者を対象に、高齢期の就労に着目した疫学研究を継続しており、超高齢社会に求められる生涯現役社会の実現に寄与する知見を得て、日本が健康長寿世界一を達成できるよう、エビデンス作りに努めている。

以上

 

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