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遠山椿吉記念 第1回 健康予防医療賞 授賞式

過去の受賞者

平成22年2月9日(火)、ホテルメトロポリタンエドモントにて「遠山椿吉記念 第1回 健康予防医療賞 授賞式」が開催されました。

写真:遠山椿吉記念 第1回 健康予防医療賞を鈴木隆雄氏(左)に授与。右は当財団・医療法人の山田匡通理事長

「遠山椿吉記念 第1回 健康予防医療賞」を
鈴木隆雄氏(左)に授与。
右は当財団・医療法人の山田匡通理事長。

この賞は、当財団の創業者で初代院長である医学博士、遠山椿吉の公衆衛生向上と予防医療の分野における業績を記念して一昨年創設した顕彰制度です。

公衆衛生の領域において、ひとびとの危険を除き、命を守るために、先駆的かつグローバルな視点で優秀な業績をあげた個人または研究グループを表彰するものと位置づけています。

平成21年度は「健康予防医療賞」において、将来の予防医療のテーマに先見的に着手したものを重点課題としました。

遠山椿吉記念 第1回 健康予防医療賞」は『高齢者の生活機能の維持・向上と介護予防を目的とした包括的健診の開発と普及についての調査研究―超高齢社会における新たな健康維持と予防医療へ向けての科学的取組み―』というテーマで鈴木隆雄氏(国立長寿医療センター研究所所長、前・東京都老人総合研究所副所長)が受賞しました。

写真:遠山椿吉記念 第1回 健康予防医療賞 特別賞を中村雅一氏(左)に授与

「遠山椿吉記念 第1回 健康予防医療賞 特別賞」
を中村雅一氏(左)に授与。

 

 

また、選考委員会の推薦により設けられた「特別賞」は『国際標準化を通じた国内臨床検査室の脂質測定精度の向上とその臨床研究・疫学研究・公衆衛生施策への応用』というテーマで中村雅一氏(大阪府立健康科学センター 脂質基準分析室室長)が受賞しました。

授賞式ではまず、当財団の山田洋輔公益事業担当理事・当医療法人副理事長が開式の辞を述べ、選考委員長の折茂肇氏(健康科学大学学長)による講評と受賞者の紹介がありました。

続いて、当財団および医療法人の山田匡通理事長から鈴木氏に「遠山椿吉記念 第1回 健康予防医療賞」、中村氏に「特別賞」が授与されました。
 

写真:祝辞を述べる山田匡通理事長

祝辞を述べる山田匡通理事長

山田匡通理事長は、「お二人の素晴らしい研究成果に接して、私どもとしても大変光栄に存じております」と述べ、「お二人ともそのご業績の背景には、非常に長い地道な努力があったとお伺いしております。私どもの活動は、いかにして人びとのいのち、健康を維持するか、どのように病気にならない環境を作るかというところに基本的なテーマがあります。このたびのお二人のご研究も、まさに私どもの目的にかなったもので、公衆衛生の発展、人びとの健康の増進に大きな貢献をされる研究成果と考えます。お二人の先生方のますますのご活躍、ご健勝をこころより祈念いたしまして私のご挨拶のことばとさせていただきます」と結びました。

山田理事長による祝辞の後、来賓として東京都健康長寿医療センターの井藤英喜センター長が祝辞を述べ、それに応えて鈴木氏と中村氏からそれぞれ、受賞についての挨拶があり、授賞式は終了しました。

続いて行われた鈴木氏、中村氏による受賞記念講演会には、およそ150名の参列者が熱心に聴き入りました。

写真:鈴木氏による記念講演          写真:中村氏の記念講演
鈴木氏による記念講演                                                                  中村氏の記念講演

写真:迫力ある記念講演に聴き入る皆さん

迫力ある記念講演に聴き入る皆さん

講演会終了後、会場を変えて行われた受賞記念レセプションでは、高築勝義当医療法人所長の挨拶に続き、当医療法人常務理事、太田千代次の発声で乾杯が行われました。参加者は大いに交流を深め、レセプションは盛況のうちに終了しました。

 

 

 

授賞式祝辞、受賞者あいさつ

選考委員長 講評

写真:折茂 肇

折茂 肇
健康科学大学 学長

鈴木隆雄先生の ご研究は、今後の超高齢社会における高齢者の健康維持・向上をめざした新しい予防医療のあり方を提示したもので、具体的には、70歳以上の高齢者の介護予 防をテーマとして、地域で行った健診の追跡調査のデータを元に、高齢者を対象とした新しい包括的健診のあり方や、介護予防の方策を提示しています。

こ のたびのご業績は東京都老人総合研究所(以下、老人研)が東京都の小金井市、秋田県南外村等の一般住民を対象として1991年に開始した Longitudinal Interdisciplinary Study on Aging(LISA Study) の調査成績および2001年から板橋区内で実施してきた高齢者の「お達者健診」の成績が主なベースとなっています。

鈴木先生は、当時この研 究プロジェクトの中心的な研究者としての役割を果たしておられました。本日ご臨席の柴田博先生ほか老人研の研究グループもこのプロジェクトに積極的に関 わってこられ、本日の受賞は、この研究グループの業績に対するもので、鈴木先生が研究グループの代表として受け取られるものです。

第1回遠 山椿吉賞の重点課題は、将来の予防医療のテーマに先見的に着手したものです。この業績は、高齢者の健康維持を目的とした包括的健診法を新たに開発したこと に意義があり、現在わが国における介護予防策の基礎となるデータを提示された点、および国際的にも極めて高く評価されている点の2点が評価され、受賞に最 もふさわしい研究テーマと結論された次第です。

遠山椿吉賞は、本賞1名を表彰いたしますが、このたび特に特別賞を設け、中村雅一先生にお贈りすることとなりました。以下に、その理由をご説明申し上げます。

中村雅一先生の長年にわたるご研究は、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患の危険因子とされる、血中脂質の基準値の国際的な標準化に関するものです。精度管理や標準化という仕事の性格上、非常に地味ですけれども、極めて重要な研究であります。

動 脈硬化治療薬のEvidence-Based Medicine(EBM)の構築において、縁の下の力持ちとして重要な役割を果たしてこられました。遠山椿吉博士の生き方にも一脈通ずるところがあり、 公衆衛生の向上に地道に貢献されてこられたことに深い敬意を表し、このたび特別賞として表彰することにいたしました。

高齢者の介護予防の新たな包括的健診法を開発された鈴木隆雄先生、また特別賞として血中脂質に関する国際的な標準化の研究を行ってこられた中村雅一先生の受賞を心からお喜び申し上げます。

選 考委員長として選考の経過を振り返ってみますと、この遠山椿吉賞の存在と意義を強く感ずる次第です。公衆衛生学や予防医療は、研究者個人の先見的な発想 や、社会的使命に基づく地道な研究を必要としますが、先端医療の分野とは異なり、非常に地味な分野で研究者個人に光が当たることの少ない分野です。

この遠山椿吉賞がこれまで行われた多くの優れた研究者の業績に光をあて、その偉業を公に称えることで、これをきっかけに次世代を担う後進の育成につながれば幸いであると考えております。

最後になりますが、この顕彰制度を創設された財団法人東京顕微鏡院および医療法人社団こころとからだの元氣プラザのますますのご発展を祈念して結びの言葉とさせていただきます。ありがとうございました。」

 

授賞式来賓祝辞

写真:井藤 英喜

井藤 英喜
(独)東京都健康長寿医療センター センター長

鈴木隆雄先生は、 1990年に東京都老人総合研究所にご赴任されて以来、「小金井研究」「お達者健診」から「介護予防」の仕事まで、20年にわたり老年学、高齢者の研究に 従事されてきました。先生の用いられた研究手法は疫学,介入研究ということですが、この種の研究には、研究チームをつくり、それをリードする立場の人のご 努力とともに、チームの協力がないと、なかなか大きな成果を生まない分野です。その意味で今回の受賞は、鈴木先生とともにチームの方々も同時に受賞された 賞だと思います。

鈴木先生のお仕事の素晴らしいところは、まず、ハイリスクの人を見つけ出す科学的な診断法「お達者健診」を作って、その有 効性を検証し、同時にそこでピックアップされたハイリスクの方たちに対して、どういう運動、どういう食事のプログラムを提供すれば、より良い介護予防につ ながるかといったことについて、非常に科学的に研究を進められた点にあります。

これまで、介護予防は、福祉の分野が担っていた仕事です。そ こでは、気持ちはあっても科学はなかった、という時代が、非常に長く続いておりました。その意味では、鈴木先生たちが始められた仕事が、福祉の分野にエビ デンスが必要である、科学的な思考が必要であるということを、初めてわが国に持ち込んだのではないか、と思っております。

鈴木先生は、実 は、古病理学の日本を代表する研究者の一人として、遺跡から出土した古代の骨から病気や人類の進化を研究されてきました。先生の一貫した仕事を見ています と、人類の現状や将来の方向性と課題といった、非常に息の長い視点から仕事をされていると感じます。今後とも、高齢化社会が進む日本において、ユニークな 視点から革新的な仕事を展開し、貢献していただきたいと思っております。

中村雅一先生は、35年の長きにわたって、血中脂質の標準化という分野をリードされてきました。私どもも、日本で初めて大規模臨床研究を始めた際、血中脂質の測定精度が多施設で同一かという問題が生じたために、先生のご指導で脂質測定の標準化を実施していただきました。

結 果、高齢者のコレステロールを低下させることが、動脈硬化の予防につながることを導き出す研究を10年かけて完成させたわけですが、その影には、信頼でき る検査を多施設で実施できたことが、非常に大きな役割を担っています。また、日本は、動脈硬化のあり方も欧米とはかなり違いますが、国際比較には、日本で 実施している検査が国際的な基準に達していることが必要です。

そうしたなか、中村先生は、35年の長きにわたって、わが国の血中脂質の測定が国際基準に達するように種々のご努力を傾けられました。中村先生のお仕事は、日本発の脂質測定データの信頼性を確立したともいえます。本当に素晴らしい仕事をされたと思っております。

最 近では、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を直接測る検査キットが日本から出ていますが、実は、その開発に非常に大きな役割を果たされたのが中 村先生です。一方で、その限界に関しても、中村先生は非常にはっきりと発言されています。こうした厳しい姿勢が、皆さんが中村先生のお仕事に大きな信頼を 寄せる元になっていると思います。

先生には、ますます今後とも、検査医学の分野で、ご指導を願えればと思っております。

 

 

遠山椿吉記念 第1回 健康予防医療賞 受賞者あいさつ

写真:鈴木 隆雄

遠山椿吉記念 第1回 健康予防医療賞 受賞
鈴木 隆雄
国立長寿医療センター研究所 所長

 

「私 の研究は、東京都老人総合研究所(以下、老人研。現・東京都健康長寿医療センター)に、当時の副所長であった柴田博先生が、日本でしっかりとした老化に関 わる長期縦断研究をやろうと誘ってくださいましたことがきっかけです。それまで私は主に、古代の人びとの骨に表れた病気を研究する、古病理学という研究分 野で、骨の病気について少しは勉強していましたが、高齢者の健康とか骨の老化についてほとんど研究したことがありませんでした。 柴田先生からそれを是非 生きた人びとへ応用して、骨の老化を一緒にやってもらえないかというお言葉をかけていただき、それ以降いつの間にか20年たち、こうして息の長い日本人の 老化研究へ続いたのが今日までの道のりということになります。

老化に関わる長期縦断研究を一緒に担わせていただくなかで、「要介護」の状態 になっていく高齢者の方の危険因子が、徐々にわかってきたわけです。また、ちょうどそのころに我が国で介護保険が開始されたこともあり、その危険因子を取 り除くことで、高齢者の方々には少しでも健康で、生活機能をしっかりもって自立していただくことが非常に重要だと思いました。そこで、10年ほど前から、 高齢者には病気予防よりも、むしろ生活機能を維持し、要介護状態にならないことを目的とした健診、「お達者検診」をモデル的に開始したわけです。

老 人研で、多くの研究者仲間と少しずつ介護予防に関する科学的なエビデンスを積み上げながら、高齢期、特に後期高齢期になっても日々の生活を自立し、自分ら しい人生を送ることのできるためのエビデンスを少しずつ積み上げてきたことが、今回の受賞に結びついたと思っております。

栄えある第1回の受賞に際して、たいへん身に余る光栄と存じます。今まで一緒にこの研究を行ってきた多くの研究者の方々と共同での受賞と考えております。

昨年の4月に着任した国立長寿医療センターの仲間達と、これまでの老人研の仲間達と共に、日本をまとめるかたちで、できるだけ健全な高齢社会を築けるよう、今後とも少しずつ努力を続けていきたいと思っております。」

 

遠山椿吉記念 第1回 健康予防医療賞 特別賞 受賞者あいさつ

写真:中村 雅一

遠山椿吉記念 第1回 健康予防医療賞 特別賞 受賞
中村 雅一
大阪府立健康科学センター 脂質基準分析室 室長

「江戸末期、緒方洪庵は、日本で初めて天然痘の予防接種を行いました。大阪は、予防医学の原点です。遠山先生の「魂の系譜」を読ませていただきました。遠山先生は、研究室で得られた成果を公衆衛生の現場で生かすようにと、教えておられます。」

「私 どもが進めてきた「標準化」とは、検査機関が正確な測定結果を患者さんにお返しして、医師による診断治療のお手伝いをするという品質管理システム(精度管 理)のことです。米国の疾病対策予防センター(CDC)が、WHOの協力センターとして世界に展開する2種類の脂質標準化プログラムに参加して34年間が 経過しました。

この間、CDCから提供された標準化用の血清の総数は3万216検体。7億1176万円相当の便宜供与を受けたことになりま す。米国は巨額の税金を使って、私どもの標準化を支援してくれました。米国における心臓病対策とは心筋梗塞対策であり、これは高コレステロール対策につな がります。米国の国民病である心筋梗塞を制圧するという、並々ならぬ熱意と決意を感じます。CDCが私どもに求めた対価は、技術協力による貢献でした。標 準化で得られた研究成果は、国内はもとより、近隣諸国から標準化の求めがあれば、いつでも支援・協力してほしいという内容です。

このCDC の精神を受けて、私どもは、本来の研究領域である秋田・茨城・大阪・高知における脳卒中の予防対策に関する調査・研究のみに活用することなく、1)循環器 疾患の予防対策が行われた全国15のコホート地域において、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール。中性脂肪などの精度管理、 2)厚生労働省の国民健康・栄養調査、循環器疾患基礎調査、都道府県の健康・栄養調査、3)メタボを対象とした特定健診および保健指導における協力、4) 世界中の試薬メーカーや臨床検査室からの標準化の依頼、なかでもわが国で開発された、HDLコレステロールとLDLコレステロールの直接法に関する研究開 発上の支援、評価、認証試験、5)周辺各国の標準化に、誠心誠意、公正かつ公平に対応してきました。

今回の受賞は、私個人の名前になっておりますが、実質的には標準化を進める上でご支援いただいた多くの人たちを代表してお受けするものと心得ております。

標 準化は、皆様方の目に直接触れることのない舞台裏の、地道で根気のいる仕事であります。この影の仕事に今回光をあてられ、栄えある賞をいただくことになり ました。仮に標準化にゴールがあるとすれば、それは地上から脳卒中や心筋梗塞が制圧され、撲滅される日であると考えております。その日が到来するまで、標 準化は続きます。

このたびの受賞は、脳・心血管系疾患の予防対策が更に前進するための激励の一里塚です。さらに、後に続く人たちにも希望と勇気と光を与えるに違いありません。これを機会に、今後も一層精進したいと考えております。」

 

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