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第2回 食と環境の科学賞 受賞者

過去の受賞者

遠山椿吉記念 第2回 食と環境の科学賞 受賞者発表

このたびは、たいへん多くの優れた研究テーマが応募されましたが、厳正なる審査を重ねた結果、栄えある第2回食と環境の科学賞受賞者、および特別賞として顕彰すべき受賞者を決定いたしましたので、発表いたします。

受賞者のお二人には、こころよりお祝い申し上げます。

遠山椿吉記念 第1回 食と環境の科学賞

(副賞:100万円)

受賞者
塩見 一雄 (国立大学法人 東京海洋大学 教授)
テーマ名
「魚介類アレルゲンの同定と分子生物学的性状の解明ならびに検査法開発に
関する研究」

研究成果の概要

 
遠山椿吉記念 第1回 食と環境の科学賞 奨励賞

(副賞: 50万円)

受賞者
小泉 昭夫 (京都大学大学院医学研究科環境衛生学分野 教授)
テーマ名
「食と環境の難分解性環境汚染物質の長期モニタリング」

研究成果の概要

   

研究成果の概要:遠山椿吉記念 第2回 食と環境の科学賞

受賞者

塩見 一雄 (国立大学法人 東京海洋大学 教授)

テーマ名

「魚介類アレルゲンの同定と分子生物学的性状の解明ならびに検査法開発に
関する研究」

背景

食物アレルギーに関する厚生労働省の実態調査(1996-1999年度)により、魚介類を原因食品とする患者が多いという意外な事実が明らかにされた。特に成人の食物アレルギーでは甲殻類(エビ、カニ)を原因食品とする患者が最も多く、魚類がそれに続いて第2位であった。

このように魚介類アレルギー問題はわが国の食の安全確保における緊急課題として一躍クローズアップされたが、問題解決にとって必須である魚介類中のアレルギー誘発物質(アレルゲン)に関する知見はきわめて乏しかった。

調査・研究のねらい

魚介類(魚介類の代表的な寄生虫であるアニサキスも含む)を原因とする食物アレルギーによる健康危害の防止を目指し、アレルゲンに焦点をあてて以下の研究を行った。

  1. アレルゲンの同定:各種魚介類のアレルゲンをイムノブロッティングで検索するとともに、未知アレルゲンについては単離精製・同定を試みる。
  2. アレルゲンの分子生物学的性状の解明:基本情報として、各種魚介類のアレルゲンの一次構造をcDNAクローニング法により解析し構造特性を明らかにするとともに、抗原の安定供給体制の確立のために、得られたcDNAをもとにIgE反応性を有する組換えアレルゲンを調製する。さらに、交差性の分子レベルでの理解のために、アレルギーの発症に関わるアレルゲンのIgE結合エピトープを解析する。
  3. アレルゲン検査法の開発:アレルギー表示制度の対象となっている魚介類を、簡便かつ迅速に検査する方法を開発する。
  4. アレルゲンの低減化:魚介類加工食品によるアレルギー発症の危険性を低減するため、加工によるアレルゲンの分解・除去方法と効果を検討する。

調査・研究の成果

  1. 魚類の主要アレルゲンはパルブアルブミン、甲殻類の主要アレルゲンはトロポミオシンであるという従来の推測を、多くの種類で確認した。また、各種軟体動物の主要アレルゲンは甲殻類同様にトロポミオシンであることを証明するとともに、新規アレルゲンとして魚類にコラーゲン、甲殻類にsarcoplasmic calcium-binding protein(SCP)、軟体動物にパラミオシンを同定した。さらに、魚介類の代表的な寄生虫であるアニサキスからも数成分の新規アレルゲンを同定した。
  2. 魚類のパルブアルブミン、甲殻類・軟体動物のトロポミオシンを重点的に、魚介類アレルゲンの一次構造特性を明らかにした。一部アレルゲンについては、大腸菌で組換え体を調製した。
  3. マサバパルブアルブミン、ニジマスコラーゲン、軟体動物トロポミオシンのIgE結合エピトープを解析し、交差性を考察した。魚類パルブアルブミンの場合、Ca2+結合に関連した高次構造IgE結合エピトープが重要で、Ca2+結合部位を変異させた改変体はIgE結合能が著しく低いことを明らかにした。
  4. トロポミオシンに対する抗体を利用したサンドイッチELISA法に基づく甲殻類検査法を開発し、キット化した(FAテストEIA-甲殻類「ニッスイ」)。本キットはバリデーション試験を経て、厚生労働省通知法指定の甲殻類検査法として採用されている。その他、頭足類検査法はすでに開発済みであるし、魚類検査法も現在開発中である。
  5. パルブアルブミンは魚肉練り製品の製造工程中に効果的に除去できることを見出した。また、甲殻類や貝類のエキスについては、プロテアーゼ処理によるアレルゲン性の低減化に成功した。

【 受賞対象業績の概要説明

特に生活環境衛生または食品の安全に対する独創性、将来性、有効性、経済性、貢献度等について

受賞者は、食物アレルギーに関する厚生労働省の実態調査以前から先見の明をもって魚介類アレルギー研究に着手し、魚介類アレルギー研究では常に中心的な役割を果たしてきた。受賞者の研究は、アレルゲンの同定と一次構造やIgEエピトープに関する分子レベルの基礎研究から、現場対応型アレルゲン検査キットの開発、食品加工によるアレルゲンの低減化といった応用研究まで幅広く、魚介類アレルギーによる健康危害の防止という点で公衆衛生への貢献は多大であるし、魚介類アレルギーの適切な診断法・治療法の確立が求められている医療現場にとっても貴重な情報を提供している。

とりわけ、アレルギー症例が多いことがわかっていた甲殻類(エビ、カニ)のアレルゲンに関する科学的知見の蓄積と検査法の開発は、エビ、カニの特定原材料(表示義務品目)への格上げ(2008年6月)の裏付けとなっているという点で貢献度が高い。また、魚肉の練り製品化によるアレルゲンの除去、甲殻類や貝類のエキスでのアレルゲンの分解は、アレルギー患者のQOL向上に大きく役立っている。

受賞者は、研究成果を数多くの原著論文として公表するだけでなく、食品系・医学系雑誌における総説、書籍(「魚貝類とアレルギー」、「魚介類アレルゲンの科学」)、各種講演会などを通して魚介類アレルギーの正しい知識の普及に努めている。さらに、人材育成にもカを注ぎ、受賞者の所属する機関の卒業生が、わが国の大学、公的検査機関、民間企業における魚介類アレルギー研究を牽引している。

研究成果の概要:遠山椿吉記念 第2回 食と環境の科学賞 特別賞

受賞者

小泉 昭夫 (京都大学大学院医学研究科環境衛生学分野 教授)

テーマ名

「食と環境の難分解性環境汚染物質の長期モニタリング」

背景

我が国の食料自給率はカロリーベースで40%程度であり、多くの食料を海外に依存している。食の安全を確保するために、我が国では多くの施策が国際的協調の中で導入されているが、規制外の物質や諸外国での不正な使用が行われてきた。特に環境で分解を受けない有機フッ素化合物や、使用が禁止されているDDTなどのPOPs(Persistent organic compounds)やメラミンなどは捕捉できない可能性がある。

そこで、適切なリスク管理には、主な生産国および我が国でランダムサンプリングによる食事および血液や母乳など生体試料からの曝露評価の情報も活用することが安全確保には必要である。過去において小泉は生体試料バンクの創出により日立環境財団から環境賞を受賞しているが、今回の申請は、継続モニタリングが対象であり、以前のバンクの創設を対象とした受賞とは内容は重複しない。

調査・研究のねらい

受賞者グループの研究の特色は、血液、食事、母乳を用いて難分解性環境汚染物質の継続モニタリングを継続している点である。我々は、1980年代からの日中韓越の血液など生体試料を用いて、我が国のみならず、アジア各国での経年変化とともに国際間比較も行ってきた。本研究の独創性は、経年変化を追跡することにより急激な曝露の増加の見られるものをmonitoringによりいち早く特定し、汚染源の察知を行い、健康影響の未然に防止するための予防原則に基づいた施策を行うことである。

調査・研究の成果

受賞者グループの主な研究成果は、以下の3点である。

  1. 難分解性有機フッ素化合物、パーフルオロオクタン酸(PFOA)およびパーフルオロオクタンスルフォン酸(PFOS)の環境汚染の解明と汚染源の解明:PFOAおよびPFOSは、撥水性が高く界面活性剤1950年代以降多用されてきた。しかし、1990年代後半から環境中での残留性が高いため、ヒトでの健康影響が懸念された。我々は2000年初頭において世界に先駆け、PFOAおよびPFOSの環境濃度を評価し、我が国においてPFOAの高度汚染があり、京阪神地域では、飲料水および大気の汚染が進行していることを報告してきた。また1980年代以降の血清を用いて、著しい増加の認められることを報告した。これらは、PFOAの我が国での汚染状況を明らかにするとともに、京阪神地域での汚染の防止の施策に貢献した。
  2. 臭素化難燃剤の環境および生体試料のモニタリング:臭素化難燃剤は、家電製品のプラスチックに難燃性を賦与するため用いられる。近年、環境残留性および室内汚染による曝露および新生児への綬乳を介する発達への影響が問題となっている。我々は、過去および現在の血清を用いて近年5-10倍程度増加していることを見出した。そこで、母乳を用いて、我が国の汚染状況を検討し、欧米より低いレベルにあることを確認した。また、母乳への分泌機構および汚染源を検討し、より脂溶性が中程度で、分子量の小さい誘導体が、母乳へ移行しやすいことを見出した。また国際比較では、韓国で採取した母乳に高いことが見出された。
  3. その他:2007-9年に我が国採取した食事において、Positive list chemicalは基準値以上観察されなかった。この一方、使用が禁止されている、DDT, HCB, HCH, Toxapsaphen, Mirexなどが日中韓の3力国で採取した母乳中に認められた。これら化学物質は,Stockholm条約で使用が禁止されているが、高濃度で食事中に検出された。DDTは中国で不正使用されているDicofol由来であり、Endosulfanは使用が禁止されていない韓国由来と考えられた。

【受賞対象業績の概要説明

特に生活環境衛生または食品の安全に対する独創性、将来性、有効性、経済性、貢献度等について

受賞者グループは、難分解汚染物質について、食事、母乳、血液を用いて長期的にmonitoringを行い長期的な動向から汚染が進行していることを証明してきた。これらの研究活動は国際的にも高く評価されている。さらに、PFOAに関しては、我が国の環境施策に多大な貢献をするのみならず、大阪府の環境行政を通じて地域環境汚染源対策を行い、実をあげた。

 

 

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