第9回 食と環境の科学賞 授賞式・受賞記念講演会・レセプション

2025(令和7)年2月12日(水)、ホテルメトロポリタンエドモント(東京・飯田橋)にて「遠山椿吉記念 第9回 食と環境の科学賞」の授賞式・受賞記念講演会・レセプションが開催されました。受賞者、来賓の方々、選考委員の先生方をはじめ、企業、学会、行政機関、報道関係者ほか両法人関係者など、100名近い参加者が祝福に集まりました。

馬 建鋒氏

「遠山椿吉記念 第9回 食と環境の科学賞」を馬 建鋒氏(左)に授与 右は当法人の山田匡通理事長

平田祐介氏

「遠山椿吉記念 第9回 食と環境の科学賞 山田和江賞」を平田祐介氏に授与

遠山椿吉賞・山田和江賞

遠山椿吉賞は、当法人の創業者で初代院長である医学博士、遠山椿吉の公衆衛生向上と予防医療の分野における業績を記念して、その生誕150年、没後80年となる平成20年度に創設されました。日本の公衆衛生と予防医療において、人びとの危険を除き、命を守るために、先駆的かつグローバルな視点で優れた業績をあげ、社会に貢献する研究を行った個人または研究グループに対し顕彰し、学術向上に寄与することを目的としています。
2015(平成27)年度より創設された山田和江賞は、40歳以下(応募年の4月1日)の遠山椿吉賞応募者の中から、優秀な研究成果をあげており、これからの可能性が期待できる個人または研究グループに対し顕彰し、研究のさらなる発展を奨励することを目的としています。

本年の受賞について

2024(令和6)年度は、「食品の安全」「食品の機能」「食品媒介の感染症・疾患」「生活環境衛生」を重点課題といたしました。

馬 建鋒氏(岡山大学 資源植物科学研究所 教授)が「穀物有害元素集積機構の解明と低集積品種の育成」というテーマで、「遠山椿吉記念 第9回 食と環境の科学賞」を受賞されました。

平田祐介氏(東北大学大学院 薬学研究科 助教)が「食品中の多様なトランス脂肪酸の生体作用機構に関する研究」というテーマで、「遠山椿吉記念 第9回 食と環境の科学賞 山田和江賞」を受賞されました。

授賞式

戸田勝也常務理事の開式の辞、渡邉治雄選考委員長からの講評の後、受賞されたお二人に山田匡通理事長より、賞状、記念品、副賞、祝福の言葉が贈られました。続いて、来賓からの祝辞、受賞されたお二人の挨拶がありました。 >>詳細はページ後半へ

山田匡通理事長
山田匡通理事長より祝辞
受賞記念講演会

参加者が熱心に聴き入り、質疑応答が活発に行われました。 >>講演録(PDF:9MB 23ページ)

馬 建鋒氏 講演
馬 建鋒氏の講演「穀物有害元素集積機構の解明と低集積品種の育成」
平田祐介氏 講演
平田 祐介氏の講演「食品中の多様なトランス脂肪酸の生体作用機構に関する研究」
レセプション

食と環境の科学センター所長の挨拶、当法人理事による乾杯が行われ、参加者が交流を深めました。

宮田昌弘所長
食と環境の科学センター 宮田昌弘所長より挨拶
安田和男理事
安田和男理事による乾杯の音頭
レセプション会場
レセプションの模様

開式の辞 
戸田 勝也 /当法人 常務理事
選考委員長講評 
渡邉 治雄 /国立感染症研究所 名誉所員(元所長) 公益財団法人黒住医学研究振興財団 理事長
祝辞 
山田 匡通 /当法人 理事長
来賓祝辞 
平山 隆志 /岡山大学 資源植物科学研究所 所長
松沢 厚 /東北大学大学院 薬学研究科 教授
受賞者挨拶 
馬 建鋒 /岡山大学 資源植物科学研究所 教授
平田 祐介 /東北大学大学院 薬学研究科 助教

開式の辞

戸田 勝也
一般財団法人東京顕微鏡院・医療法人社団こころとからだの元氣プラザ 常務理事

本日は皆様たいへんご多用の中、「遠山椿吉記念 食と環境の科学賞」の授賞式にご出席を賜り、誠にありがとうございます。遠山椿吉賞は「食と環境の科学賞」と「健康予防医療賞」という2つの部門があり、それぞれ隔年で選考、表彰させていただいております。今年度は「食と環境の科学賞」が選考の対象となり、おかげさまをもちまして今年で第9回目を迎えることができました。
これもひとえに大変お忙しい中、厳正なる選考を行っていただきました渡邉選考委員長をはじめとする選考委員の皆様の審査のおかげであり、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

このような厳正なる審査を経て選ばれた受賞者の皆様に心からお祝いを申し上げます。 最後になりましたが、ご臨席の皆様へご出席の御礼を申し上げ、開会の挨拶とさせていただきます。

選考委員長講評

渡邉 治雄
国立感染症研究所 名誉所員(元所長) 公益財団法人黒住医学研究振興財団 理事長

遠山椿吉賞受賞者の馬 建鋒氏は大麦等のカドミウムやヒ素の集積に関与する遺伝子を同定するとともに、遺伝子の組み換え手法を駆使し、それら有害元素の集積を大幅に低下させたイネや大麦の品種改良に尽力されており、質の高い独創的な研究であると評価されました。また、食の安全性への貢献度が高いだけでなく、社会的インパクトも大きいと考えられます。
山田和江賞受賞者の平田 祐介氏は、トランス脂肪酸の中でも、エライジン酸やリノエライジン酸等の人工型のみが毒性が強いこと、アラキドン酸やEPA、DHAなどがその毒性を軽減することを発見されました。これらの不飽和脂肪酸を含む食材を摂取することで、トランス脂肪酸によるリスクを軽減させる可能性を突き止めております。これも食品分野における大きな貢献であり、社会的貢献が高いものと評価されました。
お二人の研究とも基礎的および応用的な意味においてたいへん優れた研究であります。ご受賞おめでとうございます。

祝辞

山田 匡通
一般財団法人東京顕微鏡院・医療法人社団こころとからだの元氣プラザ 理事長

この遠山椿吉賞という顕彰事業は、当法人の創業者である医学博士、遠山椿吉先生の生誕150年、没後80年でもある2008年に創設しました。
遠山椿吉先生は、明治維新後の日本の、特に東京を中心とした「公衆衛生」の改善、それから「予防医療」の発展に非常に大きな貢献をされたわけですね。この2つの側面を別々に顕彰しようと思い「食と環境の科学賞」が第1回目、その翌年には「健康予防医療賞」ということで交互にやって参りました。非常に優秀な論文がたくさん出てきて、それらを紹介することができましたので、やはりこの賞を創設して本当によかったなとつくづく思います。
そして2015年に山田和江賞を創設しました。山田和江は私の母親です。東京顕微鏡院の創業は1891年ですが、第2次世界大戦中はほとんど活動できず、戦後になって細谷省吾という東大の細菌学の教授と一緒に私の母親が頑張って再興したのです。やはり彼女の貢献も忘れてはならないと思いました。山田和江賞は、遠山椿吉賞に応募された方の中から40歳以下の方、これからさらに大きく成長し、研究を発展させていける優秀な方を選んで表彰することになりました。

そのようにして今日に至っていますが、これらの賞に非常に優秀な方々が応募され、表彰後もますますご活躍される方も多いようです。今回受賞された馬先生と平田先生も非常に立派な貢献をされまして、心から感謝申し上げます。そして渡邉治雄先生をリーダーとする選考委員会の方々がいらっしゃいます。この顕彰事業の価値というのは、この選考委員の方々の価値なのです。これだけの方々が議論をして選考しているのですから、非常に価値があると私は思っています。選考委員の方々に厚く御礼を申し上げると同時に、今回、賞を授与されたお二人に心からお祝いを申し上げたいと思います。

来賓祝辞

平山 隆志
岡山大学 資源植物科学研究所 所長

馬先生、このたびは受賞おめでとうございます。また渡邊選考委員長をはじめ選考にあたられた方々、この賞に関わられた方々に、当研究所の先生を受賞者として選んでいただきましたことを心より感謝申し上げます。

今回の受賞は、私にとっても非常に嬉しいことです。馬先生の研究が優れていることはもちろんですが、先生は人物的にも、教育者としても、それからリーダーとしても1級で、我々の研究所において本当に誇れる人物です。先生がこのような栄誉ある賞に選ばれたことは、私にとって本当に嬉しく、誇りに思います。

「食と環境の科学賞」において植物科学分野の研究が選ばれたのは初めてだと思います。これは馬先生の業績はもちろん、評価していただいた選考委員の方々のご慧眼と思います。医食同源という言葉があります。健康の源は食であるという意味ですが、食のほとんどは植物に依存しています。その植物を理解することは、我々がより良く生きていくためには欠かせないことであり、植物科学は医学や薬学と同じように重要であることは明白です。 さらに地球温暖化が進む昨今、食料供給、食料安全保障の観点から環境に強い作物の育種が喫緊の課題となっております。また人類がこれからも豊かに暮らしていくためには、より品質の高い作物が求められています。我々はこれらの課題を解決するために日夜努力をしておりますが、今回の馬先生の受賞を大きな励みとして、これからも研究を推進していきたいと考えております。

松沢 厚
東北大学大学院 薬学研究科 教授

まず平田先生に心よりお祝い申し上げます。また、この賞に携わって頂きました関係各方面の先生方に心より御礼申し上げます。

平田先生は数学をベースとし、脂質、生化学や衛生科学といった要素を積み上げて、細胞死、あるいは炎症といった細胞ストレス応答とそのシグナル伝達機構といった視点から今回の研究を成し遂げられました。先生の注目した物質というのが、心臓疾患などの原因となるトランス脂肪酸です。人体に毒性があることは疫学的にはよく知られていましたが、実はそのメカニズムはほとんど分かっていなかった。そこにメスを入れたのが今回の研究です。

例えば加工食品に含まれる、人工的に作られたトランス脂肪酸は毒性が非常に強い。ところが牛肉や乳製品にも別種類のトランス脂肪酸が含まれており、この天然型のトランス脂肪酸にはまだ毒性がないことを平田先生が科学的に初めて証明しました。さらには、DHAなどの高度不飽和脂肪酸がトランス脂肪酸の毒性を抑制することも発見し、国際的にも高く評価されています。 まさに今回の「食と環境の科学賞」の趣旨に非常に合致した素晴らしい研究を成し遂げられたと思います。今後もご自身の研究を発展させ、食の安全や疾患、治療や予防に役立つ研究を進めていただくことを祈念いたします。

受賞者挨拶

遠山椿吉記念 第9回 食と環境の科学賞

馬 建鋒
岡山大学 資源植物科学研究所 教授

この度は、栄えある遠山椿吉賞を賜り、誠に光栄に存じます。これまで長年に渡りましてコツコツと地道に努力を重ねてきた結果、このような形で評価していただきありがとうございます。
今回の受賞対象となりました「穀物有害元素集積機構の解明と低集積品種の育成」は私のライフワークの一つです。土壌中のカドミウムやヒ素のような有害元素は食物連鎖を経て私たちの健康に深刻な影響を及ぼしてしまいます。例えばイタイイタイ病もそうした公害病の一つです。この有害元素を減らすために、輸送機構の解明や低集積品種の育成に力を入れました。今後はこの賞を励みに一層研究に邁進し、また次世代を担う若手の育成にも尽力してまいりたいと思います。

遠山椿吉記念 第9回 食と環境の科学賞 山田和江賞

平田 祐介
東北大学大学院 薬学研究科 助教

本日はこのような素晴らしい賞をいただき、財団関係者の皆様、選考委員の先生方にまずは御礼申し上げたいと思います。私がトランス脂肪酸の生態作用機構の研究を始めたのは2014年10月、足かけ10年と少しです。トランス脂肪酸はもともと人間の体内にはなく、なぜ体に悪く作用するのか、より分子レベルで研究してみたいと本当に単純な動機からスタートしました。続けていくにつれ、体に悪い脂肪酸の種類や、含まれている食品、毒性の軽減方法やその応用について明らかになってきました。研究室の学生の皆さんと一緒に、色々なアイデアをもとに進めてきた研究がこうして受賞できたことは本当に感無量です。

皆様の温かいご支援、ご指導、ご鞭撻をいただきながら、引き続き研究に邁進したいと思っております。この度はありがとうございました。

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