このたび、たいへん多くの優れた研究テーマが応募されました。選考委員会による厳正なる審査を経て、当法人の経営会議にて協議した結果、栄えある第9回 健康予防医療賞の受賞者を決定いたしましたので、発表いたします。
受賞された方々には、こころよりお祝い申し上げます。
※ 「山田和江賞」は、当財団が戦後10年間休止していた事業を再建し、平成26年に享年103で亡くなられた故山田和江名誉理事長・医師の50余年の功績を記念して創設されました。40歳以下の遠山椿吉賞応募者に対し、その優秀な研究成果を顕彰するとともに、研究の更なる発展を奨励する制度です。
| 受賞者 | 安田 二郎 長崎大学高度感染症研究センター 副センター長/教授 |
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| テーマ名 | 簡便・迅速な高感度感染症診断法の開発 |
感染症を臨床症状のみで診断することは困難であり、確定診断には病原体の遺伝子や抗原などの特異的検出が求められる。21世紀に入ってからも多くの感染症が人類の脅威として次々出現しており、その度にそれらの感染症に対する診断法の確立が必要となっている。
受賞者は、20年以上にわたり、感染症診断技術の開発に取り組み、特に、感染症診断法としてPCR法による病原体遺伝子検出が主流となる中、ポータブルかつ安価にシステム(機器)導入ができ、迅速・簡便かつ高感度の検査が可能な診断法としてLAMP(loop-mediated isothermal amplification)法を原理とした高感度迅速診断検査法の開発において成果を上げてきた。これまでに、10種類以上の病原体に対してLAMP法を開発し、4件の特許取得と16報の原著論文発表を行ってきた。また、蛍光検出による検査時間の短縮および高感度化、常温試薬の開発、バッテリー駆動可能なモバイル型装置の導入などを企業と取り組み実現し、社会実装にまで結び付けている。 実例として、西アフリカにおけるエボラ出血熱、ジカ熱、さらに、COVID-19に関しても、開発した診断キットがいち早く厚労省から公定法として承認され、クルーズ船コスタアトランティカ号のクラスタ-検査、東京オリンピック関連の国際大会、長崎県の主要検査場・機関および離島など、国内外で広く活用されている。
また、人材育成という観点から、これまでに自身の研究室において、発展途上国からの留学生を含む30名以上の大学院生の教育・研究指導を行ったほか、ギニアやコンゴにおいて検査者のトレーニングを行っている。
| 受賞者 | ワニガマ ダミカ リーシャン 山形大学医学部感染症学講座 特別研究員 |
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| テーマ名 | 参加型ワンヘルス感染症発生予防システム(POOPS) |
新興感染症は、資源が限られた地理的に隔絶された途上国で頻繁に発生する。受賞者は、不十分な地域における新興感染症の早期発見を目的として、従来の公衆衛生サーベイランスと非伝統的なサンプル(鳥の糞、排水、使用済みコンドームなど)源に加え、分子・ゲノム解析ツールを統合することで、鳥インフルエンザ、サル痘(Mpox)、SARS-CoV-2変異株、各種性感染症などの病原体に関する早期警告シグナルの捕捉に成功した。
世界40か国以上でサーベイランス活動を実施し、離島、都市部の非公式居住区、紛争地帯、社会的に脆弱なコミュニティを対象とした。このアプローチは人獣共通感染症およびパンデミックリスクのある疾病に対する世界的な早期警戒システムを実質的に拡張し、コスト効率に優れ、導入が容易で、社会的包摂性の高い感染症対策モデルとして、特に最も脆弱な地域における公衆衛生保護に貢献した。
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