コロナ禍のフードロスを考える

2021年5月19日
一般財団法人東京顕微鏡院
食と環境の科学センター 所長 宮田 昌弘

フードロスの現状を知る


まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物、いわゆるフードロスという言葉はすでに皆さまご存じのことと思います。

世界で1年間に13億トンの食料が廃棄され、そのうち我が国では612万トン(2017年度推計値)もの食料が捨てられています。これは東京ドーム約5杯分とほぼ同じ量で、具体的には日本人1人あたり茶碗1杯分のごはんが毎日捨てられていることになります*1。そんな状況の中、世界では9人に1人が栄養不足で苦しんでいることも現実で深刻な問題です。

新型コロナウイルス感染拡大による影響

原料の段階から製品やサービスが消費者の手に届くまで、全プロセスで繋げることを「フードサプライチェーン」とよびます。食のインフラであるフードサプライチェーンが、生産者から消費者へ食料を安定提供する重要な役割を果たしています。

ところが、コロナ禍で家庭用の食材等の需要が急増する一方で、業務用の需要が減少するなど、需給のバランスが大きく変化しました。

そこで、こうした変化に対応するため、フードサプライチェーンの機能をさらに高めていくよう先進技術等の活用を進めていくことが重要です。

また、フードロス削減の対策の一つであるフードバンク活動にも異変が起きているようです。コロナ禍でフードバンクへの食品提供が増える一方、それを扱う手法が経済活動自粛などで変化し、平時のように扱えないようです*2。“ほしい人”も“食品”も増えているのに、悩ましい状況です。

どうすれば?

なかなか終息が期待できない中、フードロス削減計画を継続していくにはどうしたらよいのでしょうか?

前記した、フードサプライチェーンは「製造」「卸売」「販売」の分野でそれぞれ新たなビジネスモデルを構築しています。情報技術を駆使し、需要予測情報の共有化や過剰生産・過剰発注の防止に尽力し、また、AI等を用いた販売・来客予測の活用や地域イベント情報を把握することも進めていくようです。

さらに、情報技術の活用に留まらず、製品の品質保持期限を包装技術や冷凍保存技術の向上で可能な限り長くすることがフードロスに繋がるとしています*3

一方、フードバンク活動においても、「フードバンクの流通革命」ともいうべき動きが始まっているようです。

例えば、スマートフォンやタブレットで使えるアプリを開発し、提供する側と社会福祉協議会の関係者が情報を共有することで限られたスタッフや倉庫の有効活用を目指しています。

また、提供するスーパーから直接支援団体が直接やりとりする「フードバンクを介さない流通」を模索しています。この方法なら配送スタッフや倉庫が不要となり効率があがります*2

検査機関の立場から

前記したとおり、フードロス削減の一つの対策として、食品製造業の立場からは、食品の製造過程の衛生管理を徹底して、品質保持の期限を少しでも長く維持することがあげられます。一方、検査機関としてはそれを客観的な指標として数値化することができます。

製造過程で十分な加熱処理、処理後の衛生管理を徹底し、生菌数や大腸菌群数等の汚染を無くすことで品質保持の期限を長くすることができます。また、包装手段を工夫することにより、カビの発生を防ぎ日持向上に繋ります。

そこで、東京顕微鏡院では客観的な指標として一般生菌数、大腸菌群数、乳酸菌数、真菌数などの微生物試験、さらに、酸価、過酸化物価、pH、粘度、酸度などの理化学検査を実施しています。食品の安全性や品質を考慮し、適正な期限表示を設定するために当院に相談いただければ幸いです*4


  • *1 農林水産省・環境省調べ、FAO,総務省人口推計(2017年)※
  • *2 2020年12月19日 NHK おはようダイジェスト
  • *3 2020年11月 東京都食品ロス削減に向けた提言
  • *4 詳細は当院HP(食品等の検査→賞味期限検査)をご覧ください。

*農林水産省HPより https://www.maff.go.jp

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