シリコーンゴムについて

2014年2月28日
一般財団法人 東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
食品理化学検査部 技術専門係長  柴田 博

シリコーンゴムとは

シリコーンゴムはケイ素(Si)を含む化合物を原料とします。ケイ素は、地球上で酸素の次に多い元素で、酸素と結合しやすい性質のため二酸化ケイ素(SiO2)として岩石や土壌中に大量に存在します。

この二酸化ケイ素からケイ素を工業的に取り出して、精製し純度を高めたものを金属ケイ素と呼びます。この金属ケイ素を化学合成させシロキサン結合(Si‐O-Si)を作りメチル基などの有機基を結合させ、機能性を高めるための添加剤を混合し加熱硬化してシリコーンゴムは作られます。

「シリコン」と「シリコーン」

「シリコン」と「シリコーン」という表記を目にすることがあると思いますが、この2つは同じようで全く意味が違うものです。シリコンは英語で書くと「Silicon」 でケイ素(Si)という原子番号14の元素であり、ケイ素原子のみで作られる金属状のものを意味します。一方、シリコーンは英語で書くと「Silicone」 でケイ素を含む有機化合物の総称です。

よってシリコンゴムではなくシリコーンゴムと表記されるのが適切です。ゴム製の家庭用調理器具の材質表示に「シリコン」、「シリコンゴム」、「シリコーンゴム」と商品によって異なる表記がされていますが、これは家庭用品品質表示法において統一した用語が定められていないためです。

シリコーンゴムの安全性

シリコーンゴムは熱に強く、耐久性や化学的安定性が良いことから、電子機器、自動車、建築、医療、生活用品などの幅広い分野で利用されています。誤って食べたとしても体内には吸収されず、人体には無害でアレルギー反応も少ないと考えられていることから、医療現場などでも使用されています。

今日では、電子レンジで手軽に蒸し料理ができるシリコーンゴム製調理器具が注目されています。食品安全委員会では「一般的にシリコーンゴム製調理器具は約260℃までの高温で使用可能とされている。また離型性に優れていることから、食材などがくっつきにくく、調理時の取り扱いが容易な調理器具でもある。」としています。

最近の研究において、シリコーンゴム製調理器具で調理した食品への原材料由来の化学物質の移行量が測定され、とくに脂肪分の多い食品に移行することが報告されています。しかしカナダ環境省は人への健康には影響しないと結論づけています。

我が国において食品接触材料としてのシリコーンゴム製品についてのリスク評価は行われていませんが、食品用のシリコーンゴムなどのゴム製品については食品衛生法の規格基準に基づき材質試験(材質中に含まれる鉛、カドミウムの含有量)及び溶出試験(材質から食品への移行するホルムアルデヒドや亜鉛等の量)が定められています。

当検査部では主に輸入品のゴム製の器具・容器包装を検査しております。シリコーンゴム製の調理器具は年間を通して数多く検査を実施しておりますが、シリコーンゴム製以外の有機ゴム製品では、1年間に数件規格値をこえる製品があるの対して、シリコーンゴム製品においては規格値を超える製品はほとんどありません。

しかしシリコーンゴム製品を含むゴム製品に使用される配合剤の種類やゴム製品の製造法は日々進化しているため、厚生労働省では制定されてから20年以上経過している規格基準や試験条件の見直しの検討が行われています。

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