カビが産生する有害毒素と対策

2013年4月26日
一般財団法人 東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
食品微生物検査部 部長 難波 豊彦

カビの一部には食品中に毒素(カビ毒)を作るものがあります。その多くは食べた後直ちに嘔吐や下痢のような急性の中毒を起こすことはありませんが、長期間食べ続けることにより肝障害、腎障害、消化器系障害などを起こす危険性があります。米や麦など私たちが毎日のように口にする食品では注意が必要です。

カビ毒の中で特に食品を汚染する頻度が高く、人や家畜に健康被害を起こした事例があるものを表に示しました。なかでもアフラトキシンは天然物質の中で最も発がん性が強いことと、世界的に農産物への汚染が広く発生していることから最も注意が必要なカビ毒です。 

日本ではアフラトキシン(農産物を含む一般の食品)、デオキシニバレノール(小麦)、パツリン(りんご果汁)について、食品衛生法に基づく基準値等が設定されています。特にとうもろこしやナッツ類、香辛料のアフラトキシンは生産国や食品の種類によって国がアフラトキシン検査を義務付けています。 

厚生労働省のウェブサイトでは輸入時検査等において食品衛生法違反となった事例を掲載しています。これによれば平成24年度は約1000件の違反事例があり、アフラトキシンの検出によるものが18%もあり、その半数近くはとうもろこしで、他に落花生、いちじく、アーモンドなどの例があります。

その他のカビ毒で、デオキシニバレノールは麦類の赤カビ病の原因になるフザリウム属(いわゆる赤カビ)が産生します。この汚染は日本も含めて世界的に問題となっています。パツリンは、りんご果汁が最も汚染されやすい食品です。

オクラトキシンは穀類やコーヒー豆、カカオ豆などを汚染しますが日本では規制値がありません。これらカビ毒はいずれも熱に強く、通常の加工や調理では分解されません。国や生産者・製造者は汚染実態を把握し、生産段階や貯蔵段階での適切な対策をとり、汚染した食品が消費者に渡らないようにすることが重要です。

表:農産物や食品を汚染する主なかび毒

(農林水産省ホームページから抜粋)
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