賞味期限・消費期限、どうやって決めている?

2013年2月1日
財団法人 東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
食品微生物検査部 部長 難波 豊彦

スーパーやコンビニエンスストアで目にする食品の大部分は、賞味期限または消費期限が表示されています。この表示は食品衛生法やJAS法で義務付けられており、それぞれには定義があります。簡単に言うと賞味期限はおいしく食べることができる期限です。(この期限を過ぎても、すぐ食べられないということではありません)

一方、消費期限は期限を過ぎたら安全性を欠くことがあるので食べない方が良いという意味です。消費者にとってとても重要な情報であるこの期限は、食品を製造・加工または販売する業者が科学的、合理的な根拠の下に設定することになっています。

「食品期限表示の設定のためのガイドライン」(平成17年、厚労省・農水省)では、食品の特性に十分配慮した上で、食品の安全性や品質等を的確に評価するための客観的な項目(指標)、つまり微生物試験や理化学試験及び官能検査の結果等に基づいて決定することとされています。微生物検査は菌の増殖、理化学試験では粘りや濁り、pHや酸化を、官能検査では臭、味、食感などの変化を確認します。これらの試験データから製造者や販売者は商品に関する知識・経験を活用して期限を設定します。

この試験は全ての商品で行う必要はなく、業界団体が作成した期限設定のガイドラインなどを参考に項目を絞ったり、特性が類似した食品の試験データを参考にして設定することもできます。

試験の一例として消費期限を設定する場合をご紹介します。店舗内で野菜サラダを10℃の冷蔵で保管・販売する場合を想定して微生物試験と官能検査を行ったところ、次のような結果を得たとします。

保存開始時 12時間後 24時間後 36時間後
一般生菌数(/g) 1,500 8,500 45,000 210,000
大腸菌群数(/g) 10未満 10未満 10未満 230
外観・臭気 (対照) 対照と差無し 対照と差無し 一部に褐変
評価(社内基準等) 良好 良好 良好 不適

試験結果から保存後24時間までは腐敗・変敗など品質の劣化が無く良好な状態と考えられます。期限設定はこれらの客観的なデータに安全係数(1未満)を乗じて求めます。商品の品質の変動が少ないものでは0.8以上が望ましいとされていますが、惣菜類では変動が多い可能性があることから0.6や0.7が多く用いられます。例に当てはめれば24時間×0.7=16で、16時間が消費期限の目安となります。

実際はこれに各製造者、販売者が蓄積する経験や知識、製品の特性を踏まえて設定することになります。ただし、この期限は、開封せず所定の温度条件などで保存した場合のものです。

家に持ち帰ったら、冬だからまだ大丈夫と思わないで早めに食べるようにしましょう。

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