2021.07.15
財団法人東京顕微鏡院 理事、 麻布大学客員教授
獣医学博士 伊藤 武
責任者は衛生管理者及び調理従事者等に対して衛生管理や食中毒防止に関する研修参加、必要な知識・技術の周知徹底を図ることは従来通りであるが、調理従事者の衛生管理の項で述べた如く、調理従事者等の健康管理、腸管出血性大腸菌の検便、ノロウイルスの検査、発病者の医療機関への受診などについて適切に対処することが追加された。
図1:調理員がノロウイルスを運ぶ
さらに、ノロウイルス食中毒発生があった場合、調理従事者等について速やかにリアルタイムPCR等の高感度な検査を実施し、ノロウイルスを保有していないことが確認されるまでの間、調理に直接従事することを控えさせる対策をとることが望ましい。
ノロウイルス食中毒や感染症が頻発している高齢者施設や保育所・幼稚園等の施設に関しても責任者の望ましい職務を規定した。(1)平常時から危機管理体制を整備し、感染拡大防止のための組織対応を文書化すること。(2)そのための具体的な訓練を行うこと。(3)従業員や利用者の下痢などの健康異常を迅速に把握するために定常的に有症状数を調査・監視すること。
本マニュアルには別添として、
(1)原材料、製品の保存温度
(2)標準作業書(手洗いマニュアル、器具等の洗浄・殺菌マニュアル
(3)原材料等の保管管理マニュアル
(4)加熱調理食品の中心温度及び加熱時間の記録マニュアル
点検表、記録簿の別紙として、
(5)調理施設の点検表
(6)従事者等の衛生管理点検表
(7)原材料の取り扱い等の点検
(8)検収の記録簿
(9)調理器具等及び使用水の点検表
(10)調理等における点検表
(11)食品保管時の記録簿、
(12)食品の加熱加工の記録簿
(13)配送先記録簿
があるので、各食品企業の責任者等はこれら記載を参考に会社の規模や従業員数、提供する調理食品数或いは衛生管理目標などに応じて作成すべきである。
本マニュアルは制定当時から小規模な飲食店ではなく、大規模調理施設に対する衛生管理の徹底を目的としたもので、同一メニューを1回300食以上または1日750食以上提供する調理施設に適用するとされた。本マニュアルが運用されて10年を経過してきたところ、前報で報告した如く、大量調理施設での食中毒事例は著しく減少したが、小規模な飲食店や小規模な給食施設での食中毒発生が椙薇を極めている。
本マニュアルは既に意識の高い事業者では規模に拘泥せずに、活用されてきたし、その効果も認められていることから、今後ともあらゆる調理施設、飲食店等に適用していくべきであると考える。
排泄されるウイルス量 | 1g当たり1万から10億 |
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患者と非発病者のウイルス量 | 差はない |
排泄期間 | 2週聞から1ヶ月 |
食品従事者のノロウイルス保有率(冬季) | 数% |
食品従事者のノロウイルス検査 | 発病者の確認、作業への復帰判断 |
※本稿は、東京電力の「電化厨房ドットコム」メルマガに2008年9月~2009年2月(10月は除く)まで連載されたものです。