このたび、たいへん多くの優れた研究テーマが応募されました。選考委員会による厳正なる審査を経て、当法人の経営会議にて協議した結果、栄えある第10回 食と環境の科学賞の受賞者を決定いたしましたので、発表いたします。
受賞された方々には、こころよりお祝い申し上げます。
※ 「山田和江賞」は、当財団が戦後10年間休止していた事業を再建し、平成26年に享年103で亡くなった故 山田和江 名誉理事長・医師の50余年の功績を記念して創設されました。40歳以下の遠山椿吉賞応募者に対し、その優秀な研究成果を顕彰するとともに、研究の更なる発展を奨励する制度です。
| 受賞者 | 杉本 直樹 国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部 部長 |
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| テーマ名 | 標品を必要としない革新的定量分析法(qNMR/RMS法)の開発と、食薬の安全安心を支えるグローバルスタンダードの構築 |
従来、食品・医薬品分野における定量分析では、クロマトグラフィーを用いて標品と試料を比較する相対分析法が主流であった。しかし、標品の純度を正確に評価することは容易ではなく、測定値に系統的な誤差が生じるという課題があった。また、国際規格ISO/IEC 17025では測定結果の国際単位系(SI)へのトレーサビリティが求められており、信頼性の高い新たな定量手法の確立が望まれていた。
受賞者は、NMRが有する優れた定量能力に着目し、分析対象物質とは異なる認証標準物質(CRM)を基準として、分析対象物質の標品を必要とせずに物質量や純度を高精度に測定できる¹H qNMR法を世界で初めて実用化した。この成果は、現在広く利用されている¹H qNMR法の技術的基盤となり、SIにトレーサブルな定量分析の普及に大きく貢献した。さらに、1H qNMRとクロマトグラフィーを組み合わせた相対モル感度(RMS)法を開発し、分析対象物質の定量用標品を必要としない新たなクロマトグラフィー定量法の実用化にも成功した。
これらの革新的な分析技術は、定量値の信頼性の向上に寄与するとともに、標品の調達や純度評価に要するコストと時間の削減を可能とした。さらに、受賞者は、日本の公定分析法への導入に加え、JIS、JAS、ISOにおける国内外の標準化を主導し、分析技術の国際的な共通基盤の構築に中心的な役割を果たした。これらの一連の成果は、食品・医薬品の品質保証と公衆衛生の向上に加え、関連産業の発展にも大きく貢献している。
| 受賞者 | 山崎 聖司 大阪大学 産業科学研究所 准教授 |
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| テーマ名 | 耐性菌の薬剤排出ポンプ阻害による新規抗菌戦略に関する研究 |
薬剤耐性菌の増加は世界的な公衆衛生上の重大課題であり、2050年には薬剤耐性による年間死亡者数が1,000万人に達するとの予測もある。特に水系・食品媒介性耐性菌は、食の安全と健康に深刻な脅威を与えている。
本研究は、多剤耐性化の主要因の1つである薬剤排出ポンプに着目し、その機能を阻害することで既存抗菌薬の効果回復を目指した。大規模なアミノ酸変異体解析により、排出ポンプにおける2つの薬剤結合部位を利用した新たな基質認識機構を解明するとともに、低分子化合物の結合によってポンプ機能を停止できる「阻害剤ピット」の存在を発見した。さらに、阻害剤結合にはピット内の複数の空間領域が重要であることを明らかにし、阻害剤設計の基盤を確立した。
これらの知見を活用したスクリーニングにより、多剤耐性大腸菌、緑膿菌、アシネトバクターなどに有効な複数の新規阻害剤を創出し、製薬企業と連携して臨床応用を目指した開発を進めているだけでなく、独自の高効率スクリーニング法も開発した。排出ポンプ阻害剤はそれ自体に抗菌作用を持たないため新たな耐性菌を生み出しにくく、既存抗菌薬の有効性を回復する革新的な治療戦略として期待されており、耐性菌対策と公衆衛生の向上に大きく貢献する成果である。
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