2026(令和8)年2月18日(水)、ホテルメトロポリタンエドモント(東京・飯田橋)にて「遠山椿吉記念 第9回 健康予防医療賞」の授賞式・受賞記念講演会・レセプションを開催しました。受賞者、来賓の方々、選考委員の先生方ほか両法人関係者など、多くの方々が祝福に集まりました。

「遠山椿吉記念 第9回 健康予防医療賞」を安田 二朗氏(右)に授与 左は当法人の山田匡通理事長

「遠山椿吉記念 第9回 健康予防医療賞 山田和江賞」をワニガマ ダミカ リーシャン氏に授与







戸田 勝也
一般財団法人東京顕微鏡院・医療法人社団こころとからだの元氣プラザ 常務理事
本日はたいへんご多忙の中、「遠山椿吉記念 健康予防医療賞」の授賞式にご出席を賜り、誠にありがとうございます。遠山椿吉賞は「食と環境の科学賞」と「健康予防医療賞」という2つの部門があり、それぞれ隔年で選考、表彰させていただいております。今年度は「健康予防医療賞」が選考の対象となり、おかげさまをもちまして今年で第9回目を迎えることができました。
大変お忙しい中、多数の応募の中から厳正なる選考を行っていただきました門脇選考委員長をはじめとする選考委員の皆様には、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
このような厳正なる審査を経て選ばれた受賞者・関係者の皆様に心からお祝いを申し上げます。 最後になりましたが、ご臨席の皆様へご出席の御礼を申し上げ、開会の挨拶とさせていただきます。

門脇 孝 氏
虎の門病院 院長、東京大学 名誉教授、日本医学会・日本医学会連合 会長
山田和江賞のワニガマ ダミカ リーシャン先生は世界の40以上の途上国において、インフラが乏しく医療が限定された地域における感染症の監視調査モデルを構築しました。コスト効果、導入の容易さ、社会的包摂性の高さに加え、国際共同研究のイニシアチブを取る組織力と、日本からの発信という点も、山田和江賞にふさわしい研究者として評価しました。
遠山椿吉賞の安田二朗先生は、LAMP法を原理としてポータブルかつ安価に導入できる感染症の高感度迅速診断検査法を開発されました。企業の協力を得て社会実装した結果、ギニア共和国やコンゴ民主共和国への供与や、厚生労働省の公定法としてなど国内外で幅広く活用されているだけでなく、留学生を含む30名以上の大学院生や、ギニアやコンゴにおける検査者に対する人材育成にも取り組まれており、満場一致で遠山椿吉賞にふさわしい研究であるとの結論に至りました。
今年度も素晴らしい研究者を選ぶことができましたのは、選考委員会にとっても大きな喜びです。改めてお二人の先生にお祝いを申し上げ、選考委員長の経過説明といたします。

山田 匡通
一般財団法人東京顕微鏡院・医療法人社団こころとからだの元氣プラザ 理事長
遠山椿吉先生は1857年に生まれ、1891年に34歳の若さで東京顕微鏡院を創設されました。東大の医学部を出た医学者でしたが、ペストなどの外国からの伝染病や脚気、結核等の予防について非常に大きな問題意識を持たれた方です。
東京顕微鏡院という名前でお分かりかもしれませんが、医療機器の開発もされていました。機器の知識が非常に旺盛で、顕微鏡の使い方を2000人を超える若者を集めて教えていた教育者でもありました。
この方が求めていたものは、基本的に「健康な命」だと思います。人間にとって一番大切な健康な命をどう維持するか、どう発展させるかという問題意識、それが予防医療であると。私は遠山椿吉先生が遺された心を引き継ぐ形で、2008年に遠山椿吉賞を設けました。
この賞には門脇先生を中心として8人の先生方の選考委員会があります。今回も多くの研究の中から選考されましたが、喧々諤々の議論をして、最後には不思議なことに安田先生とワニガマ先生に一致するのです。それほどお二人の研究が素晴らしいものだったということです。 両先生に心からお祝いを申し上げるとともに、今後ますますこの賞が人々の健康な命と、それを守る環境のために貢献することを祈念いたしまして、私の挨拶といたします。

高橋 匡慶 氏
キヤノンメディカルシステムズ株式会社 IVD事業統括部 検体検査システム事業部 CL企画部 部長
安田先生は多岐にわたる研究をされていらっしゃいますが、今回受賞された簡便迅速な高感度感染症診断の開発において、研究を研究のまま終わらせないという大変熱い思いがあり、先生のご指導のもと、私どもの企業が事業にする、つまり社会実装するという役割を持たせていただきました。
2003年、科学警察研究所で安田先生が開発された生物剤検知技術と、弊社のDNAチップの技術とを合わせて生物剤検知システムを製品化しました。モバイルで簡易かつ迅速に検出できる技術で、これは全国に普及しました。2014年にアフリカでエボラ出血熱のウイルスが流行した際には、先生が開発された診断技術を私どもで製品化してアフリカのいくつかの国に供給しました。2016年から17年にジカウイルスがブラジルで流行した際にも、先生の診断法を実用化するため、私どももブラジルに渡り、現地でしかできない臨床試験をして、PMDAの承認を得、診断薬にしました。2020年からのコロナ禍においては、長崎港に寄港した客船「コスタ・アトランチカ」の乗組員の検査を、安田先生を中心に長崎大学と長崎県の方々が実施し、623名の乗組員のうち150名弱の陽性者を検出・隔離して1人の死者も出しませんでした。東京オリンピック関連の様々な国際大会においても選手と関係者の検査を行い、陰性の方だけを会場に入れました。
以上のような、迅速かつ正確な検査が大量に求められる場面においても、先生が開発された技術が使われたのです。安田先生の研究における探究心、エボラ出血熱や新型コロナといった危機に誰よりも速く診断技術を届ける行動力、世界各地の健康を守るという強い信念、これらは公衆衛生に取り組まれる方々にとって大きな道しるべになるはずです。安田先生の今後のますますのご健勝とさらなるご活躍を祈念いたしまして、及ばずながら賞辞とさせていただきます。

浜本 洋 氏
山形大学 医学部 感染症学講座 教授
ワニガマ ダミカ リーシャン博士は大変なアイデアマンであり、インフルエンザだけでなく、エムポックスや薬剤耐性遺伝子の疫学的研究、ファージ療法や、私も研究している黄色ブドウ球菌のバイオフィルム研究でも成果を上げており、研究の幅が非常に広い方です。
今回の研究も、現地のコミュニティに深く入り込んだ独自のネットワークを基盤とした極めて独創的で実践的なものです。医療資源が限られている地域でも持続可能な監視体制を構築し、パンデミックの根を早期にとらえる、そのような挑戦は、予防医学にいち早く着目された遠山博士の理念と深く通ずるものがあるのではと考えます。
遠山椿吉先生は山形の山辺町のご出身で、この賞を同じ山形に来て研究をしているリーシャン博士が受賞できたご縁はたいへん感慨深いです。皆様はなぜこれほど国際的に活躍しているリーシャン博士が山形にいるのかと疑問に思われるかもしれません。ですが私の以前の所属、帝京大学医真菌研究センターの創設者である山口英世先生も山形の山辺町の出身で、奇しくも遠山椿吉先生と同郷であり、現在流行しているB型インフルエンザも山形で分離されたことに由来して「山形系統」という名前がついておりますように、山形は感染症研究が盛んに行われた歴史があります。こうした流れをリーシャン博士がさらに発展させてくれることを期待しております。 あらためまして、選考委員の先生方、ならびに関係者の皆様に深く感謝申し上げるとともに、リーシャン博士の研究の今後ますますの発展を祈念し、感謝の挨拶とさせていただきます。

遠山椿吉記念 第9回 健康予防医療賞 受賞
安田 二朗 氏
長崎大学 高度感染症研究センター 副センター長・教授
皆様ご存知のように、感染症は時代が変わってもなお人類の大きな脅威であり続けています。新興感染症の出現、それからグローバル化による急速な感染拡大、気候変動や生態系の変化がもたらす新たなリスクなど、感染症の脅威は増大し続けています。また、感染症は人類の生命や健康の問題にとどまらず、社会、経済、教育などあらゆる分野にとって大きな脅威となっております。
今回の受賞対象となりました私どもの研究テーマは、簡便、迅速かつ高感度の感染症診断法の開発ですが、感染症対策において最も重要なことは、いかに早く、いかに正確に診断できるかという点にあると思っています。診断の遅れは治療の遅れにつながりますし、感染拡大の制御にも重大な影響を及ぼします。
感染症研究は、単に論文を発表するだけでなく、社会実装を通じて実際の被害を減らすことに大きな使命があると思っています。そういう意味では、我々の研究開発は社会実装において、企業名は変遷していますが、同一の開発グループと一緒に進めることができたことは大変幸運であったと思います。先ほどご祝辞をいただきました高橋部長はじめ開発グループの皆様にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。また、本研究は多くの共同研究者、研究室のスタッフ、海外の協力機関の協力によって成し遂げられたもので、これらの関係者の皆様にも心より感謝を申し上げます。
遠山椿吉先生が活躍された時代も、コレラ、ペストといった流行が社会を揺るがしていました。未知の病原体に対しては恐れることなく、科学で向き合う姿勢こそが現在の感染症対策の原点であると考えています。
今後も病原体の理解を深める基礎研究を継続するとともに、その成果を社会実装へとつなげ、感染症の制御対策の構築に微力ながら貢献してまいります。そして、若い研究者が志を持って感染症研究の道を歩める環境作りにも尽力していきたいと考えています。最後になりますが、本賞のさらなる発展と、本日ご臨席の皆様のご健勝とご活躍をお祈り申し上げ、御礼の挨拶とさせていただきます。

遠山椿吉記念 第9回 健康予防医療賞 山田和江賞 受賞
ワニガマ ダミカ リーシャン 氏
山形大学 医学部 感染症学講座 助教
本日は山田和江賞という素晴らしい賞を頂戴し、誠にありがとうございます。このような大変名誉ある賞をいただくことができ、心より光栄に存じます。とても誇らしく思います。遠山先生にゆかりのある方々、そして選考委員会の先生方にも心より感謝申し上げます。日頃より多くのご指導とご支援をいただいていることに、あらためて深く御礼申し上げます。また山形大学の先生方にも、日頃からのご指導と温かいご支援に対し、心より感謝を申し上げたいと思います。
山形県は、私にとっても大切な場所です。これからも皆様への感謝の気持ちを忘れず、研究や活動においてさらに努力させていただきたいと思います。今後ともご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。本日は本当にありがとうございました。