食品従事者から検出されたサルモネラ属菌の血清型と薬剤耐性(2017年との比較検討)

一般財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター 臨床微生物検査部
馬場洋一 柿澤広美 津藤通孝 岡元 満 安藤桂子 小林理香
高橋奈央 田原麻衣子 加藤明子 鈴木智子 渡辺由美子
根津さゆみ 浦野敦子 伊藤 武

1980年代頃から抗菌薬の効かない薬剤耐性菌が増加し、感染症の治療に大きな問題が生じています。このため2015年にWHOは薬剤対策のアクションプランを提言し、世界に向けて調査や制御対策を要請しました。

臨床微生物検査部では、2017年から食品従事者の健康管理として、腸内細菌検査から検出されたサルモネラ属菌の血清型ごとの薬剤耐性頻度の検討を行ってきました。今回の調査では、2018年に分離されたサルモネラ属菌228菌株を対象とし、2017年に実施した成績と比較検討を行いました。

1. サルモネラ属菌の血清型別

供試した228菌株は51の血清型に型別されました。主な血清型は表に示すごとく52菌株(22.8%)が血清型Schwarzengrundに型別されました。ついでThompson 17菌株(7.5%)、Manhattanが11菌株(4.8%)、Newportが11菌株(4.8%)と続きました。昨年度の調査に引き続きSchwarzengrundが最も多い血清型となりました。

2.サルモネラ属菌の薬剤耐性

今回の調査ではアンピシリン、セファゾリン、セフォタキシム、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコ-ル、コリスチン、ナリジクス酸、シプロフロキサシン、スルファメトキサゾ-ル+トリメトプリム合剤の12薬剤に対する感受性試験を実施しました。

供試した228菌株のうち144菌株(63.2%)が1剤から7剤の薬剤の耐性株であり、昨年度と同様の成績でした。最も高頻度に型別されたSchwarzengrundは、供試菌株がすべて耐性株であり、3薬剤以上の多剤耐性株も42株(80.8%)ありました。

まとめ

2018年に分離されたサルモネラ属菌の血清型は、円グラフに示すごとく2017年に分離された血清型とほぼ同じでした。また、分離菌株の耐性率は53.5%から63.2%と増加傾向が認められ、3薬剤以上の多剤耐性率においても25.5%から24.6%と2年継続して高く推移したことは注目すべき成績でした。

今後ともサルモネラの血清型と薬剤耐性の動向を継続的に調査し、薬剤耐性モニタリング事業として社会に貢献する資料を提供していきたいと思います。

参考:
2017年度に食品従事者から検出されたサルモネラ属菌の血清型と薬剤耐性

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