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第4回 健康予防医療賞 受賞者発表

過去の受賞者

遠山椿吉記念 第4回 健康予防医療賞 受賞者

このたび、たいへん多くの優れた研究テーマが応募されました。選考委員会による厳正なる審査を経て、選考委員長参加による当法人・医療法人合同の経営会議にて協議した結果、栄えある第4回遠山椿吉賞受賞者を決定いたしましたので、発表いたします。

受賞された方々には、こころよりお祝い申し上げます。

chinkichiprize2015_1
(副賞:100万円)
受賞者
野田 光彦
国立国際医療研究センター 糖尿病研究部長、専任診療部長
テーマ名

地域住民コホートにおける糖尿病の大規模疫学研究
― 糖尿病の実態把握とリスクアセスメントによる
  予防指針確立のための調査・解析―

 

研究成果の概要

chinkichiprize2015_2
(副賞: 50万円)
受賞者
石和田 稔彦
千葉大学 真菌医学研究センター(感染症制御分野) 准教授
テーマ名
本邦への小児細菌性髄膜炎予防ワクチンの導入と
普及に関する研究

研究成果の概要


※ 遠山椿吉賞応募者のうち、優秀な研究成果をあげており、これからの可能性が期待できる50歳未満の方に対して、平成27年度に「山田和江賞」を創設しました。「山田和江賞」は、当財団が戦後10年間休止していた事業を再建し、平成26年に享年103歳で亡くなられた故山田和江名誉理事長・医師の50余年の功績を記念して創設されました。

 

研究成果の概要 : 遠山椿吉記念 第4回 健康予防医療賞

受賞者
 野田 光彦  (国立国際医療研究センター 糖尿病研究部長、専任診療部長)
テーマ名
地域住民コホートにおける糖尿病の大規模疫学研究
─糖尿病の実態把握とリスクアセスメントによる予防指針確立のための調査・解析─

背景

2012年の国民健康・栄養調査によれば、わが国の20歳以上の国民のうち「糖尿病が強く疑われる人」(HbA1c≧6.5%または糖尿病を治療中の者)は約950万人であり、2007年の約890万人に比較しても依然増加している。糖尿病はQOL(生活の質)や医療経済の面でも、国家的な糖尿病対策が急務である。

このような状況の中で、受賞者は、住民調査、職域健診、住民健診のコホートにおいて、糖尿病の予防と政策指針に資するエビデンスを精力的に提出し続けているが、とりわけ、多目的コホート研究(代表 津金昌一郎国立がん研究センター がん予防・検診研究センター長;英語名JPHC (Japan Public Health Center-based prospective) Study)の糖尿病調査(住民調査+HbA1cの測定+健診データの取得)に、1998年度から長年にわたって携わり、主導している。

調査・研究のねらい

上述の状況下において、糖尿病の実態を正しく把握し、またそのリスク要因を科学的に把握することは、それらに立脚した適切な政策立案や対策に必須であり、公衆衛生分野における焦眉の急であり続けている。受賞者は、住民コホート調査や健診データを用いて糖尿病の実態を具体的に把握するとともに、糖尿病の発症リスクを明確化し、論文として公表することにより、糖尿病予防施策や予防指針の基礎資料としてそれらを広く供している。

具体的には、1998~2000年と2003~2005年に12万人規模のJPHCコホートにおいて、糖尿病調査(約3万人)を行い、その後のイベント集積を待って、別添の業績一覧に示す成果を積み重ねている。

調査・研究の成果

1) 糖尿病の実態把握

糖尿病の有病率を精細に明らかにし、この論文の成績は国際糖尿病連合(International Diabetes Federation)の第7次Diabetes Atlas(本年発刊予定)に、日本からのデータとして初めて取り入れられる予定である。また、空腹時血糖値と糖尿病発症率との関係を明瞭に明らかにしており、本データは受賞者が日本糖尿病学会「糖尿病・糖代謝異常に関する診断基準検討委員会」の委員であった際、資料として提出し、空腹時血糖の正常高値(100~109 mg/dl)の領域決定のための重要な根拠資料となった。

2) 曝露因子としての糖尿病の実態把握

糖尿病やインスリン抵抗性とがん、死亡、HbA1cと心血管病との関係を明確化している。とくに最後者は、わが国の大規模コホート研究でHbA1cと心血管病との関係を初めて明らかにしたものである。

3) 糖尿病のリスク要因解析

糖尿病発症と個々の生活習慣などとの関係を解析し、とくに、わが国で初めて巨大児出産と糖尿病との関係を明らかにしている。また、HbA1cで定義される糖尿病のリスク要因を包括的に分析している。

【 受賞対象業績の概要説明 】

特に独創性、将来性、有効性、経済性、貢献度等について

本研究は、既存の大規模地域住民コホートにおいて、その当時は希少であったHbA1cによる調査を、日本糖尿病学会の標準検体を用いたきわめて正確な測定に基づいて実施した点が特徴的かつ独創的である。現在も上記2)の曝露因子としてのHbA1cとがん発症との関係を投稿中であるなど、今後も広範に成果が創出され続けるものと期待される。また現在ゲノム解析にも着手しており、その結果も待たれる。日本糖尿病学会と日本癌学会による糖尿病と癌との関係を調査した「合同委員会報告」にも、応募する研究からいくつかの文献が取り上げられており、この面でも貢献は大きい。

また、上述3)の発表業績は多く日本糖尿病学会の「科学的根拠による糖尿病診療ガイドライン」の「糖尿病の一次予防」の章に引用されており、この章の全66件の引用文献のうち日本からの文献は22件であるなかで、6件が今回応募する研究内容からのものであり、このことからも、わが国の糖尿病の予防指針の確立に多大な貢献をなしていることが窺える。

上述1)の空腹時高血の正常高値域は、特定健康診査(特定健診)における空腹時血糖の基準値の根拠を成し、特定健診のシステムにバックボーンを与えている。特定健診の有用性に鑑みるとき、本研究の有効性と、ひいては医療経済全体に与える経済性を特筆できる。

受賞者は、本研究通じて後藤 温 東京女子医科大学 衛生学公衆衛生学第二 助教、大庭志野 神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部 准教授、桐井恭子 茨城キリスト教大学生活科学部 准教授、加藤昌之 東京社会保健協会フィオーレ健診クリニック 医師、壁谷悠介 東海大学医学部八王子病院総合内科 講師(7月から)といった公衆衛生・予防医学分野の後進を育成するとともに、「健康日本21(第二次)」の策定委員や平成19年国民健康・栄養調査企画解析検討会の構成員を務めるなど、本研究における成果の発表のみならず、本領域において重要な貢献を成している。また、得られた成果を、日々の臨床を通じて社会に還元するとともに、一般へも、講演・執筆などによって普及・啓発を行い、得られた成果の還流とわが国全体の健康意識の向上に日々努めている。

 

 

研究成果の概要:遠山椿吉記念 第4回 健康予防医療賞 山田和江賞

受賞者
石和田 稔彦  ( 千葉大学 真菌医学研究センター(感染症制御分野) 准教授 )
テーマ名
本邦への小児細菌性髄膜炎予防ワクチンの導入と普及に関する研究

背景

細菌性髄膜炎は、小児感染症の中で最も重篤な感染症の代表的な疾患です。髄膜炎に罹患すると死亡例や重篤な後遺症を残す例も多く、予後不良例が全体の30%程度認められています。日本における小児細菌性髄膜炎の原因菌は、インフルエンザ菌が最も多く、ついで肺炎球菌となっており、この2菌種で原因菌全体の75%を占めます。細菌性髄膜炎に対しては、インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンが、肺炎球菌に対しては肺炎球菌結合型ワクチンが予防に有効であり、海外では1987年にHibワクチンが、2000年に7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)が導入され、劇的な予防効果が認められていましたが、日本への導入は非常に遅れていました。

調査・研究のねらい

本研究は、日本へのHibワクチン・肺炎球菌結合型ワクチン導入において必要な基礎的・疫学的データを明らかとし、日本への小児髄膜炎予防ワクチンの早期導入と定期接種化を目指す目的で行いました。主な研究内容は、

1) 人口を基にした罹患率調査

インフルエンザ菌・肺炎球菌による細菌性髄膜炎の症例数に関しては、これまでアンケート調査が主体でした。そこで、千葉県の小児を対象に、人口を基にした継続的な罹患率調査をワクチン導入前(2003年)から実施しました。この調査は、日本における両ワクチンの必要性を訴える上で極めて重要であり、かつ導入後のワクチン効果をみる上でも必須なものとなります。

2) 髄膜炎症例から分離された細菌の血清型調査

髄膜炎症例の血液や髄液から分離されたインフルエンザ菌・肺炎球菌の血清型調査を行い、日本で流行している血清型を明らかにしました。ワクチンに含まれる血清型は限定されており、ワクチン導入前後の血清型解析は、導入の必要性と効果をはかる上で重要な情報を提供します。

3) Hib及び肺炎球菌特異抗体価の測定

日本の小児が、Hib及び肺炎球菌に対する免疫を有しているかどうかこれまで明らかでなかったため、特異抗体価測定法を確立し、ワクチン導入前の健康小児及び髄膜炎罹患小児の抗体価測定を行い、これらの細菌に対する免疫の有無を調査しました。免疫を有していない場合には、ワクチン導入の必要性をより強く訴えることが可能となります。

調査・研究の成果

千葉県在住小児の髄膜炎を含むインフルエンザ菌侵襲性感染症は、Hibワクチン導入前、5歳未満人口10万人あたり13.5という罹患率まで上昇していること、肺炎球菌侵襲性感染症については、人口10万人あたり、26.1という罹患率まで上昇していることを明らかにしました(添付論文①)。ワクチン導入前のインフルエンザ菌髄膜炎の血清型はHibが95%以上を占めており、肺炎球菌に関しても平均するとPCV7に含まれる血清型が70%程度を占めていました。

また、ワクチン導入前の日本人小児の大多数が、ワクチンに含まれている血清型の細菌に対する防御抗体を有しておらず、ワクチンを接種しなければ、感染症に罹患する危険性が高いことを明らかにしました(添付論文②③)。ワクチンが導入され、全国的な公費助成制度導入後、インフルエンザ菌、肺炎球菌による髄膜炎は減少し、特にワクチンに含まれる血清型によるものが激減していることを明らかにしました(添付論文①)。

【受賞対象業績の概要説明 】

特に独創性、将来性、有効性、経済性、貢献度等について

国内において、初めて県単位で罹患率調査を実施した点、細菌の血清型とヒトの免疫原性という両面からワクチンの必要性を解析した点が、独創性としてあげられます。また、ワクチン導入後、ワクチンに含まれない血清型のインフルエンザ菌、肺炎球菌が髄膜炎の主体となっており、本研究の継続は将来的に必要となるワクチンの研究開発につながります。受賞者の研究データは、日本におけるHibワクチン、肺炎球菌結合型ワクチンの定期接種化とその継続の必要性を訴える重要な根拠となりました。髄膜炎の激減は、ワクチンの有効性を証明し、医療経済学的にも費用対効果が認められています。何よりも、日本の子どもたちが髄膜炎による死亡や後遺症から解放されたことが、本研究の一番の貢献であります。

 

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