食品中のカビ毒にご用心

2012年12月28日
財団法人 東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
食品微生物検査部 部長 難波 豊彦

カビ毒とは

微生物による食中毒では細菌やウイルスが原因になることはよく知られていますが、カビはあまり知られていません。しかし、カビの一部には毒素(カビ毒)を作るものがあります。よく知られていないのは、カビ毒の多くは喫食後直ちに嘔吐や下痢を起こすような急性の中毒が少なく、長期間連続して摂取しなければ大きな障害を起こさない場合が多いからではないでしょうか。

お正月の餅を例にとってみると、餅にカビが生えることは近年の製造技術の発達により少なくなったようですが、正月の餅だからということでカビの部分を削って食べているという方も多いのではないでしょうか。しかし、長期間食べ続けた時の影響を考えると、安全とは言い切れないのです。

カビ毒の汚染

カビ毒の中で特に食品を汚染する頻度が高く、人や家畜に健康被害を起こした事例があるものを表に示しました。これらのカビ毒は長期間摂取することにより肝障害、腎障害、消化器系障害などを起こします。

表:農産物や食品を汚染する主なかび毒
(農林水産省ホームページから抜粋)

なかでもアフラトキシンは天然物質の中で最も発がん性が強いことと、世界的に農産物への汚染が広く発生していることから最も注意が必要なカビ毒です。

2008年、アフラトキシンが検出された事故米が食用として転売された事件で、カビ毒が大きな問題となりました。また同年(独)国民生活センターが調査した輸入の高カカオチョコレートから極微量のアフラトキシンが検出され、品質管理を適切に実施するよう業界へ呼びかけたことは、カビ毒が我々の身近にあることを認識させられました。

これまでアフラトキシンが検出されたナッツ類やトウモロコシなどはすべて輸入食品であり、日本の農産物を汚染している可能性はほとんどないと言われてきました。ところが2011年宮崎大学農学部が生産した食用米からアフラトキシンが検出され、関係者を驚かせました。

カビ毒の規制

カビ自体は加熱により死滅しますが、カビ毒は熱に強く、食品が汚染されてしまうと、通常の加工・調理では完全に除くことができないものもあります。また、かび毒に汚染された農産物や食品を食べることで直接摂取する場合のほか、かび毒に汚染された飼料を食べた家畜を経由して摂取する場合もあります。

日本ではアフラトキシン(農産物を含む一般の食品)、デオキシニバレノール(小麦)、パツリン(りんご果汁)について、食品衛生法に基づく基準値等が設定されています。特にとうもろこしやナッツ類、香辛料のアフラトキシンは生産国や食品の種類によって国がアフラトキシン検査を義務付けており、当法人食と環境の科学センターでもこの検査を多数実施しています。

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