トランス脂肪酸とは

財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
食品理化学検査部 水野 竹美

食品中の脂肪には、いろいろな種類の脂肪酸が含まれています。そのうちのひとつに、欧米で問題になっているトランス脂肪酸があります。

トランス脂肪酸は人の健康へどう影響するのでしょうか?

トランス脂肪酸には、LDL(悪玉)コレステロールを増加させ、HDL(善玉)コレステロールを減少させる働きがあるといわれています。多量に摂取を続けた場合、動脈硬化などによる虚血性心疾患のリスクが高くなるとの報告もあります。その他にもがん、糖尿病、アレルギーとの関係が疑われています。

トランス脂肪酸はどのような食品に含まれているのでしょうか?

食品の加工、調理段階で生成するトランス脂肪酸を含む主なものは、水素添加された硬化油を含むマーガリン、ショートニングなどで、これらを含む加工食品、精製植物油にも含まれています。牛などの反芻(はんすう)動物の肉や乳は、天然に生成されるトランス脂肪酸を含んでいます。

食品安全委員会では、平成18年度に国内で流通している食品中のトランス脂肪酸含有量の調査を実施しています。その結果、日本人が一日に摂取するトランス脂肪酸は平均で0.7~1.3グラム(摂取エネルギー換算では約0.3~0.6%)であり、この量は欧米に比べると少ないとされています。しかし、脂肪の多い菓子や食品の食べ過ぎなど偏った食生活の人は、トランス脂肪酸摂取量が平均値を上回る可能性があるとしています。

食事、栄養および慢性疾患予防に関するWHO(世界保健機関)/FAO(食料農業機関)合同専門家会合の報告では、トランス脂肪酸の摂取量はできるだけ低く抑えるべきであり、最大でも一日あたりの総エネルギー採取量の1%未満とするよう勧告しています。

なお、当科学センターでも食品中のトランス脂肪酸について、含有量の検査を実施しています

表1 国内に流通している食品中のトランス脂肪酸含有量(g/100g)

食品名 トランス脂肪酸 食品名 トランス脂肪酸
マーガリン 7.00% 牛肉 0.52%
ショートニング 13.60% 牛乳等 0.09%
ビスケット類 1.80% ヨーグルト等 0.04%
スナック・米菓子 0.62% バター 1.95%
食用調合油等 1.40% 脱脂粉乳 0.02%

食品安全委員会HPより

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