大量調理施設衛生管理マニュアルの一部改訂について 3. 主に改訂された項目と解説(2)

財団法人東京顕微鏡院 理事、 麻布大学客員教授
獣医学博士 伊藤 武

HACCP概念に基づく重要管理事項の充実 Vol.2

(1)施設設備の構造

[ 1 ]

ノロウイルスは調理従事者の手指から食品や器具機材への2次汚染が危惧されることから、手洗い設備に関してもノロウイルス対策として手動式の設備から感知式などの自動式に変更することが望ましいとされた。これまでのマニュアルでは直接手で操作しない構造とされたが、今回は具体的に感知式などと明記された。

ノロウイルスに限らずに微生物による食中毒防止は調理従事者の手指からの2次汚染防止が重要であることから、「自動式が望ましい」とあるが、「大量調理施設では必ず自動式」に改善すべきではないだろうか。

[ 2 ]

ノロウイルス、腸管出血性大腸菌、サルモネラなどの腸管感染微生物は糞便に排泄されることから、不特定多数のヒトが利用する便所と調理従事者等が利用する便所を共有することは便所内のドアノブや手洗い施設へのこれらの病原微生物汚染の危険性が高いことから便所は調理従事者等の専用の設備が望ましいとされた。

また、これらの病原菌汚染が高い便所については定期的に清掃と次亜塩素酸ナトリウムによる消毒を行って衛生的に保たなければならない。清掃と消毒は業務開始前、業務中及び業務終了後等とされている、トイレの清掃・消毒は(2)の施設設備の管理の項に記載されている。

しかし、調理従業員が清掃・消毒を実施する場合には調理従事者が病原微生物に汚染される危険性が高いことから、衣類、履き物、手袋、マスクなどは専用のものを着用し、終了後には手洗いの徹底とうがいの励行が必要であろう。

(2)施設設備の管理

[ 1 ]

施設内における鼠属昆虫対策は従来から記載されているが、今回の改訂ではこれまでの他に、施設及び周囲を清潔に保ち、ネズミや昆虫の繁殖場所の排除が追加された。さらに、殺鼠剤や殺虫剤を使用する場合には食品を汚染しないような注意の必要性が記載された。

この追記は平成20年1月に中国産冷凍輸入鮫子のメタミドホス汚染により国内で健康被害が発生したことを鑑み注意を喚起したものであろう。

[ 2 ]

ノロウイルス患者の吐物には千から1億のノロウイルス粒子が飛び散つており、吐物から人への感染が知られているし食品や器具機材への汚染の危険性が高いことから、施設において利用者が嘔吐した場合、200mg/L以上の次亜塩素酸ナトリウム等により直ちに消毒すること。吐物の具体的な処理方法が記載されていないのでその例として表1に示した。

■表1 吐物の処理方法

【準備するもの】
ゴム手袋、マスクの着用、エプロン、次亜塩素酸ナトリウム、タオルなど布、ビニール袋。

【処理方法
1. 吐物に200mg/L以上の次亜塩素酸ナトリウムで処理。
2. 布で覆う。約30分放置。
3. ビ二-ル袋に入れ、ゴミとして出す。

【汚染した床など
次亜塩素酸ナトリウムを振りかけ布で覆い、しぱらく放置。

【処理したヒト
1. 手指を石鹸で3度洗いし、清潔にする。
2. うがいをする(イソジン)。
3. ゴム手袋などは次亜塩素酸ナトリウムに30分間つけてから、水洗いする。


※本稿は、東京電力の「電化厨房ドットコム」メルマガに2008年9月~2009年2月(10月は除く)まで連載されたものです。

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